【モントリオール(カナダ)=阿部健吾】ショートプログラム(SP)3位のイリア・マリニン(19=米国)が、フリー歴代世界最高となる衝撃の227・79点をマークし、逆転で初優勝した。

ネーサン・チェン(米国)が19年グランプリ(GP)ファイナルで記録した224・92点を上回った。

合計点333・76点は、チェンが同大会でたたき出した335・30点に次ぎ、羽生結弦の322・59点を上回る世界2位の記録となった。

フリーは冒頭、世界で自身しか跳べない最高難度のクワッドアクセル(4回転半ジャンプ)に成功。GOE(出来栄え点)3・93点を稼ぐと、次に基礎点の高い4回転ルッツをさらに美しく決めた。GOEは4・44点もの高評価を受けた。「時間がゆっくりと流れていくように感じた」と冒頭から攻めた。

さらにはループ、サルコー、トーループの4回転もノーミス着氷。「4回転の神」の異名通り、脅威の4回転5種6本を成功させる「神演技」を地元北米のファンに披露した。「全てのジャンプを降りきった時、まだ演技が終わってないのに観客が興奮状態で。本当に信じられない経験だった。最後まで全力でやり抜こうとしました」。自身でも信じられないほどの完璧な出来だった。「驚きすぎて立っていられなかったよ」。フィニッシュの瞬間、頭を抱えて仰向けに倒れ込んだ。技術点だけでも137・18点という驚きの構成だった。

日本勢は、SP2位の鍵山優真(20=オリエンタルバイオ・中京大)も309・65点の好演を見せたが、及ばず。世界選手権3度目の2位となった。SP首位発進だった宇野昌磨(26=トヨタ自動車)は280・85点の4位で、日本男子初の3連覇はならなかった。

SP10位の三浦佳生(18=オリエンタルバイオ/目黒日大高)は254・72点で8位だった。3位は、フリー2位で巻き返したアダム・シャオイムファ(フランス)で284・39点だった。