8月の陸上の世界選手権(ベルリン)男子100メートル代表・塚原直貴(24=富士通)が1日、東京・港区の富士通本社で会見し、新ライバルとのガチンコ対決を熱望した。左大腿(だいたい)二頭筋腱炎(けんえん)で、6月28日の日本選手権の決勝を欠場。4連覇を逃す間に、早大の江里口匡史(まさし、20)が塚原の自己ベストを0秒02上回る10秒07を準決勝でマークし、決勝も制した。塚原は26日のトワイライトゲームス(東京・代々木)での復帰を明言し、「どっかで、返り血を浴びさせたい」と、打倒江里口を宣言した。

 左ひざ外側の腱(けん)を痛めた塚原は、約2週間で練習を再開できる見通しを示した。だが、日本選手権での悔しさはまだ収まっていない。予選で日本歴代4位(当時)の10秒09をマークし、準決勝も追い風参考の同タイムを出した。意気込んだはずの決勝は故障で棄権し、準決勝で江里口に記録で上回られたことも、悔しさに拍車をかけていた。

 塚原

 主役はオレだと、ビッグマウスを披露して、その通りにするのが僕だと思ったけど…。決勝で(江里口と)横に並べば、楽には勝てなかった。でも、万全なら負けるわけにいかない。何ともなかったら、今すぐでも走りたい。どっかで、返り血を浴びさせたいですね。

 復帰戦は、26日のトワイライトゲームスになる。出場する予定がない江里口に対し「出てきてほしい。僕も出ますから」とラブコール。年下の早大生がびびりそうな誘いにも「そんなことないですよ、彼は九州男児ですから」と続けた。

 慎重な発言が多い日本の陸上選手の中で、塚原は奔放にコメントした。「返り血を浴びせる」ことになれば、自分が切られることになってしまう。表現は正確でないが、言葉の裏には、悔しさが詰まっている一方、挑発発言で陸上界を盛り上げたい思いもある。それだけに、400メートルリレーで新メンバーとなる江里口に「そういう時は、仲間。4人の力を1つにしていく」と歓迎した。

 記録では抜かれたが、風などの条件の違いもあり、経験も含めて塚原がエースであることに変わりはない。視線の先は、対江里口でなく、世界選手権がある。「(日本選手権で)3本しっかり走れないのは、逃げたと思われても仕方ない。この借りはベルリンで、100億倍にして返したい」。自分へのリベンジの舞台は、まだまだ残されている。【佐々木一郎】