<大相撲名古屋場所>◇10日目◇21日◇愛知県体育館

 大関琴欧洲(26=佐渡ケ嶽)が難敵を圧倒して全勝を守った。1横綱3大関を破ってきた関脇稀勢の里(23)を、一気に攻めて寄り倒し。初優勝した昨年夏場所以来3度目の無傷10連勝とした。4月に故郷ブルガリアからの留学生を支援する団体が、ベリコタロノボの実家に「八重桜」を植樹。花が咲く3年後は、横綱で迎える決意だ。

 格が違った。琴欧洲が、かつて「ライバル」といわれた稀勢の里を圧倒した。ひざを曲げ、腰を落とし、203センチの体で低く踏み込む。甘い両脇に2本差し、一気に攻め立てた。「触った瞬間、一気にパーッと。速かったね」。土俵際の突き落としも、勢いでねじ伏せた。無傷の10連勝。土俵上と同じく、休まずに2ケタ勝利一番乗りした。

 初優勝した昨年夏場所以来の快進撃に、表情も和らぐ。10連勝は気持ちいい?

 の問いかけに「気持ち良くなかったら、どうすんの」。武蔵川理事長(元横綱三重ノ海)も「スパッと下から入って一気に出た。勢いは(昨年夏場所に)近いだろ」と目を細めた。

 6月、部屋のオランダ公演で母ツェッツァさん(48)と会った。心臓病のため優勝時に来日できなかった母とは2年ぶりの再会。部屋関係者によれば、母から「日本の桜が家にある。きれいに咲くまで、頑張って」と言われたという。

 4月末、ブルガリアからの留学生支援団体「ソフィアファミリー」が、ベリコタロノボの実家に「八重桜」を植樹した。同団体主宰者は「お父さん(ステファンさん)もスコップで穴を掘ってくれました。花が咲くころには横綱でいてほしい、と願ってます」。桜が開花して満開になるのは12年5月中旬だという。

 もう1人の「父」にも吉報を届ける決意。来月に、先代佐渡ケ嶽親方で、元横綱琴桜の鎌谷紀雄氏の三回忌法要が営まれる。07年8月14日に亡くなった入門時の師匠の墓前に昨年、初優勝を報告した。部屋関係者は「今年も先代の墓前にいい報告をしたいのでしょう」と明かす。

 賜杯レースは全勝の横綱白鵬、1敗琴光喜と三つどもえの様相。「(優勝は)意識しても、しなくても変わらない」と淡々と話す。1年前は綱とりに失敗し、涙した名古屋。歓喜の涙を流すため、勝負の5日間も全力だ。【近間康隆】