法廷で日本相撲協会の内輪もめが発生した。昨年9月の尿検査で大麻に陽性反応を示し、同協会を解雇された元露鵬(29)元白露山(27)兄弟が力士としての地位確認を求めた訴訟の口頭弁論が8月31日、東京地裁で行われ、元露鵬の師匠だった大嶽親方(元関脇貴闘力)が原告側証人として出廷。協会再発防止検討委員会(当時)の伊勢ノ海理事(元関脇藤ノ川)が、検査の最中に「尿を出せばクビにしない」と約束したことを暴露した上で「はめられたと思った」とも発言した。協会側は大嶽親方の発言を「遺憾」とした。

 大嶽親方が原告側証人として検査の内幕を暴露した。昨年9月2日の力士会の際に行われた薬物簡易検査で、元露鵬は3回、元白露山は2回連続で陽性反応を示した。その上で協会側は2人に「精密検査を受けるなら、もう1度尿を出せ」と要求。2人が「帰りたい」と主張したため、大嶽親方によると、友綱理事(元関脇魁輝)から電話で呼ばれたという。

 そこで初めて、2人が陽性反応を示したことを知った同親方はこう証言した。

 大嶽親方

 尿を出せば100%終わりと思い、部屋に帰そうとした。部屋に帰ったら、どうにかうまいことになるという考えもあった。帰れないと分かり、伊勢ノ海親方に「オレたちクビですか」と聞くと、親方は「クビにしないから尿を出してくれ」と言ったんです。だから私は2人に「聞いただろ。尿を出せ」と伝えました。

 だが、直後に友綱理事が警視庁に通報して2人は連行された。大嶽親方はその状況を「はめられたと思った」と振り返り、「露鵬や白露山には申し訳ない気持ちでいっぱい」と話した。

 出廷していた伊勢ノ海理事は「大嶽親方が『解雇ですか』と聞くので、『簡易検査の段階だから大丈夫だろう』とは言った」と無責任発言の一端を認めた。「大嶽親方に電話をしてない」と証言して反論された友綱理事は「非常に遺憾。同じ組織の人間として意見があるなら法廷ではなく、直接言ってほしかった」との見解を示した。

 精密検査でも2人の元力士から陽性反応が出た事実は変わらない。大嶽親方は閉廷後に「協会と対立するつもりもなかった」と言った。一方で、「部屋に帰ったら、どうにかなる」との発言は、もみ消しを想定していたとも受け取れる。今回の法廷は、同親方自身と協会幹部の非常識な見識を示す形になった。【柳田通斉】