<大相撲秋場所>◇9日目◇20日◇両国国技館

 相撲界にも、若い力が芽生えてきた。東幕下3枚目の舛ノ山(千賀ノ浦)が琴禮(29)を押し倒して4勝目を挙げ、5場所連続の勝ち越しを決めた。九州場所(11月14日初日、福岡国際センター)での新十両へ大きく前進。90年(平2)11月生まれの19歳が昇進すれば、「平成生まれ初の関取」になる。

 若い力がはじけた。舛ノ山は踏み込みよく左を差し、一気に土俵を走った。支度部屋でテレビを見ていた関取衆までわかせる、イキのいい勝ちっぷり。元十両の琴禮を土俵下まで落とした4勝目で、勝ち越しを決めた。8日目に初黒星を喫したが、連敗を阻止。「昨日は消極的だった。師匠(元関脇舛田山)に『負けたら、またけいこすればいい』と言われて思い切りいけました」と声を弾ませた。

 平成2年生まれ。物心ついた時のテレビの主役は「千代大海関」という19歳だ。今後2番の結果と、幕下上位陣の成績にもよるが、来場所の新十両に大きく前進した。昇進すれば、平成生まれ初の関取誕生。「なれればいいな、と思うけど、気を抜けない。一生懸命努力しないと」。西13枚目では、20歳の高安が無傷の5連勝。花道奥ですれ違い「多少、意識はありました」と“一番乗り”を競うライバルを刺激にした。

 少年相撲から全国の舞台で活躍した。だが、中3を前に母マリアさん(49)の故郷フィリピンへ転居。何の不自由もなかった生活は一転した。趣味が「食べること」なのに、タンパク質を取るために「豚の血を煮たやつ」を食べなきゃいけなかった。筋肉も落ちた。でも、「甘えん坊だった」少年はミネラルウオーターを運ぶアルバイトで家計を助け、1年2カ月でたくましくなった。

 171キロの体を揺すり「だいぶ食費をかけたので、母にはゆっくりしてもらいたい」と介護士で頑張る母を思いやる。「治安が悪いから心配」というフィリピンの祖父母へは、小遣いをためて必ず仕送りをする。外国出身力士の活躍が目立つ今の角界。「日本生まれ」以上に日本の国技を愛する力士は多いが、国産ホープの出現もまた、望まれている。番付に載る力士700人のうち、平成生まれは254人。次世代の主役を狙う若い芽は、確実に育ってきている。【近間康隆】