<大相撲秋場所>◇10日目◇21日◇東京・両国国技館

 大関琴欧洲(27=佐渡ケ嶽)が、横綱追撃態勢を整えた。大関魁皇(38)を上手投げで破り、1敗をキープ。連敗癖のある苦手の終盤で、前日の敗戦を引きずらなかった。関脇栃煌山(23)を寄り切り、連勝を「57」に伸ばした横綱白鵬(25)を止めるまで、これ以上は負けられない。

 立ち合いから右上手を取った琴欧洲は、そのままグッと前に出た。寄りながら、上手投げで魁皇を転がした。「右上手を取ったら、出ようと思っていました。魁皇関が、力を出す前に攻めた」。万全の攻めで、9勝1敗。単独トップの横綱に食らいついた。

 20日は、苦手の安美錦に痛恨の1敗。場所中はほとんど出歩かないが、験直しのため、国技館前のステーキ店に入った。すると偶然、師匠の佐渡ケ嶽親方(元関脇琴ノ若)に出くわした。負けてしょんぼりしていると「今日のことは、もう忘れろ。切り替えて相撲を取れ」と励まされた。

 序盤で好スタートを切っても、終盤に崩れるのがいつものパターン。その要因について「分かったら、負けない」と話すなど、答えは出ていない。佐渡ケ嶽親方は、精神強化の必要性を指摘する。

 繊細な琴欧洲は、給料明細のすべてを理解する。部屋がある千葉県松戸市の住民税、協会に所属する団体職員としての力士は、何が経費として認められるのか、すべて頭に入れて行動している。どんぶり勘定でおおらか、という昔ながらの力士像とは一線を画す。こんな性格が時に、弱気の虫となって現れるが、この日は先手を取って、攻め抜いた。

 横綱より先には、負けられない。白鵬の連勝について「考えていないというのは、ウソをつくことになる。でも、できるだけ考えたくない」と言った。もともと、琴欧洲が負けたことが、白鵬連勝の始まり。一方、昨年の夏場所は、白鵬の連勝を33で止めた「実績」もある。

 終盤に弱い自分から脱却できるか。終盤で白鵬との対戦まで、相撲ファンの優勝への興味をつなぎ留められるかどうかは、琴欧洲にかかっている。【佐々木一郎】