<大相撲夏場所>◇初日◇6日◇東京・両国国技館

 安泰だった6大関から一転、1人横綱の白鵬(27=宮城野)は黒星でのスタートとなった。先場所まで23勝3敗と圧倒していた安美錦(33=伊勢ケ浜)に土俵際で回り込まれ、最後は押し出された。白鵬の初日の黒星は08年九州場所以来、20場所ぶり。いきなり6大関を追い掛ける形となった。

 史上初の6大関が白星発進し、安心し切った空気が一変した。結びの一番で白鵬が安美錦に敗れた。鋭く踏み込むが、まわしを取れないうちに前に出た。相手の右で突かれ、土俵際でまわり込まれると体勢は逆転。バランスを崩しながら粘るが、体が浮いたところを押し出された。白鵬は「うまい相手にうまくさばかれた」と淡々と振り返った。

 初日の黒星は20場所ぶり。連続初日勝利は19場所で途切れたが、歴代横綱では北の湖、千代の富士(現九重親方)の21場所に次ぐもの。08年九州場所で、この日と同じ安美錦に下手投げで敗れて以来だ。先場所まで23勝3敗と圧倒し、最近は13連勝中。普段は土俵入りをともにし、最も近くで見られている相手に喫した敗戦だった。初日の黒星が記憶にあるか問われると「ないね」と言い切った後「もしかしたら、今日の相手?」とおぼろげな記憶を呼び起こした。

 場所前の稽古は充実していた。周囲に「どう?

 体のはりが良くないか」と聞いたように、白鵬自身が状態の良さを感じ取っていた。「それが結果につながるかは別」と地に足はついていたはずだった。だが取組後の支度部屋では「気持ちの問題だと思う」と話した。今場所かかっている記録は特になく、それが気持ちのはりを失わせたかを聞かれると「そっちじゃない」と遮った。心身の状態がいいあまり、万全の体勢になる前に、一気に勝負を決めに行きすぎた。

 「まだまだ日にちがありますから」と車に乗り込む前には、すでに切り替えた。横綱になってから初日に敗れたのは過去3度。そのすべてで優勝している。悲観する必要がないのは、過去の実績が示している。【高橋悟史】