<大相撲夏場所>◇3日目◇13日◇東京・両国国技館

 新小結の千代鳳(21=九重)が、初の大関撃破に成功した。琴奨菊(30)に攻め込まれたが、うまく回り込んで寄り切った。場所前に届いた「何ごともおそれるな!!」という母みどりさん(61)からの激励メッセージを力に、遠藤に続く期待の若手ホープが、大きな新三役初勝利を挙げた。

 必死に動いて、千代鳳が大関戦初勝利をつかんだ。立ち合いから「負けてもいいや」と無欲でぶつかった。土俵際まで押し込みながら琴奨菊に逆襲を許すが、下がりながらも右を巻き返す。休まず回り込み、下手をつかんで寄り切った。「この1勝は本当に大きい」。新小結3日目での初白星に大きくうなずいた。

 新三役場所は、初日から横綱、大関戦に連敗した。だが、落ち込むわけにはいかない。母みどりさんからもらったメッセージが脳裏に浮かんだ。「強気でぼっくいやれ!!

 何ごともおそれるな!!」。兄千代丸に1年遅れで入門した08年から続く、場所前恒例の母からの激励文。「ぼっくい」とは鹿児島弁で一生懸命という意味。ようやく結果を出し「2日遅れちゃったけど、母の日のプレゼントだよ」と、故郷の母へ早速電話で勝利報告した。

 3年前に鹿児島・志布志市の実家が火事で全焼した。屋外の洗濯機の漏電が原因で保険が下りず、建て替え資金2000万円の捻出が兄弟の目標だ。「これから3年計画で稼いでためます」。大関撃破で懸賞5本(手渡し金15万円)をゲットした。

 師匠の九重親方(元横綱千代の富士)からは「横綱、大関戦で1勝すればいい」と言われていた。「とりあえずノルマ達成ですね」とニヤリ。打ち出し後は、兄の千代丸と焼き肉で勝利を祝った。23歳の遠藤に人気は集中しているが、21歳の千代鳳も期待のホープ。自信をつけて、羽ばたく時が来た。【木村有三】