右肘手術からの復活をかける中日吉見一起投手(30)が、復帰戦で6回無失点と好投。13年4月23日の阪神戦以来、約2年ぶりの白星を挙げた。コーナーを突いた丁寧な投球で巨人打線を2安打に封じた。13年6月に右肘内側側副靱帯(じんたい)再建の大手術を受け、昨年は白星なし。かつての絶対的エースが屈辱を晴らすシーズンが力強く始まった。

 4月1日だけど、ウソじゃない。吉見は本当に帰ってきた。「ホント、我慢してきてよかったなと思っています」。お立ち台で少し笑みを浮かべた。

 背番号19にはやはりナゴヤドームの赤土マウンドがよく似合う。「地に足がついていなかった」という立ち上がりだが、体は軽やかだった。初回に2つの投ゴロをさばき、2回と3回には先頭を安打で出しながら併殺を奪い、ペースを上げた。味方が点を重ねる一方で、丹念に腕を振った。140キロ前後の直球と、フォーク、スライダーをベースの角に配した。これぞ吉見という投球だ。

 「無事に投げ終わってホッとしています。マウンドに上がれる喜びを持って、支えてくれた皆さんに感謝してここまできた結果だと思います。今日は野手の皆さんが効率よく点を取ってくれたおかげです」

 感謝する、野球を楽しむ-。最近、何度も繰り返してきた言葉だ。苦しみ抜いた2年間。昨年は無理して7月に3試合投げたが、右肘痛が再発し、チームに迷惑をかけた。チームは8月に大失速。責任感が裏目に出た。どん底だった。

 「この2年間で考え方が大人になりました。自分には野球しかない。これが職業。1年働いてナンボということです。結果は誰にも分からない。なら今を楽しもう。自分の白黒より、マウンドを楽しもうと」

 708日ぶりの白星。谷繁兼任監督は「久しぶりに吉見らしい投球を見せてくれた」。今日2日には出場選手登録を抹消される。3日ほど肘の経過を見るためだ。

 「肘は皆さんが思っているより大丈夫です!」。お立ち台の言葉に、本拠の歓声は高まった。下馬評の低かった中日は最高の形で巨人に連勝。戻ってきたエースが高らかに逆襲の合図を告げた。【柏原誠】

 ◆吉見の苦闘 13年4月23日の阪神戦以来、白星なし。同6月に右肘内側側副靱帯の再建手術。14年2月に投球練習再開、同7月に1軍復帰したが、右肘の不調で3試合0勝1敗、防御率4・20。シーズン中から数カ月かけ再建を図り、年内にブルペン投球を再開すると、今年のキャンプは投げ込み、実戦など他の投手と同等にこなした。オープン戦は3試合で防御率1・93で終えた。