早くも昨年の森を超えた。西武森友哉捕手(19)がルーキーイヤーの昨季の6本塁打を上回る今季7号をマークした。3回、右翼席上段へ特大の1発を放った。8回にも技ありでダメ押しの適時二塁打と3安打すべてが長打。小さなパワーヒッターが暴れまくった。チームも7連勝で首位を堅持と、怪物とともに勢いは止まらない。

 170センチの小さな体が大地に根を張るように腰を沈めた。森が打撃体勢に入ると球審よりも低い姿勢を保つ。そこから不変のフルスイングを解き放った。3回、無死。矢地の真ん中高めの直球を右翼席最上段までかっ飛ばした。相手野手は微動すら許されない。一瞬で本塁打と悟らせた。昨季の本塁打数を超える7号は2年目の進化を感じさせる、すさまじい一撃だった。

 ルーキーイヤーは41試合、92打席で6発を運んだ。だが伸び盛りの今季は32試合、122打席で自己記録を塗り替えた。「毎試合ヒットを1本打とうと思って心がけているが、このホームランは会心の一打で非常にうれしいです」。数限られる感触の余韻が言葉にあふれていた。

 プレーに10代の初々しさはない。風格がありすぎる。田辺監督も「10年ぐらいやっているんじゃないか」と舌を巻く。だが先輩へ気遣いは忘れない。1日の楽天戦で決勝2ランを放ち、お立ち台へと招かれた。当日3勝目を挙げた牧田は「森が『(ヒーローインタビューが)僕ですみません』と言ってきた。でも、どう見ても森なんですけどね。『気を使わなくていいよ』と返した」と舞台裏を明かした。1軍最年少だが十分すぎるほどの気遣いが先輩に愛される一因でもある。

 長打のキングに立った。本塁打はリーグ3位だが、長打率は6割1分で12球団トップ。7回にフェンス直撃の二塁打、8回には右手一本で低めの変化球を拾い、右翼線二塁打でダメ押し点を奪った。二塁打は12本とリーグ1位。宮地打撃コーチは「あの子の代名詞であるフルスイングの中でも合わせることができる。だから体勢が崩されても距離が出る。ただ者じゃない」と長打が多い要因を分析する。

 どれだけ本塁打数を伸ばすか、誰にも想像できない。「去年と比べる必要はないけど6本以上は打ちたいと思っていた」。お立ち台の頭上ではファンの「30本!」「40本!」の無限の期待が降り注いだ。「30本、40本打てればいいけど、そこまでの技術はない」。その言葉もシーズン後にどう変わるか、誰にも分からない。【広重竜太郎】