ロッテの勝利のシナリオが、残りアウト5つで崩れた。2-1と1点リードの8回、4番手の大谷智久投手(30)が1死一塁からの3連打で3点を失い逆転負け。勝てばクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージ(S)突破だったが、日本ハムとの対戦成績は1勝1敗の五分となり、今日12日の最終第3戦まで持ち越された。命運は、エース涌井秀章投手(29)に託された。

 ロッテベンチのため息は、敵地の歓声にかき消された。2-2の8回1死二、三塁。大谷は初球カーブを打たれた。「狙われていたと思う。そんなに悪い球じゃない」が、外の120キロを日本ハム矢野に拾われた。中前に落ちる一打で2点を勝ち越された。ファーストS突破のもくろみがガラガラと崩れた瞬間だった。

 伊東勤監督(53)は熟慮し、この日に臨んだ。先発はチェン。当初の予定は涌井だったが、前日の第1戦に勝ち、試合後に第3戦のチェンと入れ替えた。涌井は6日のレギュラーシーズン最終戦で137球を投げている。中4日で第2戦も可能だったが、疲労を考慮。体調を整える時間を与えた。

 落合投手コーチは別の狙いを補足する。「一番に考えたのは、チェンをどこで使うかということ」。経験が少ない左腕は、9日の守備練習でも失策を連発。緊張は明らかだった。先勝したことで、仮に第2戦で負けても、まだ涌井が控える。なるべく楽な気持ちで、チェンを送り出したかった。また、チェンで連勝なら、温存した涌井をソフトバンクとのファイナルS第1戦にぶつけられる。CS開幕2日前の8日、伊東監督は「そうなれば最高」と言った。

 思惑は途中までうまくいった。チェンは5回1失点。益田、松永と0でつないだ。だが、8回に崩れた。大谷が先頭田中にストレートの四球。1死後、近藤の二塁内野安打に、中村が一塁悪送球で一、三塁としたのも響いた。そこから、レアード、矢野の連続適時打を食らった。

 当初の予定通り、涌井をこの日に投げさせ、一気にファーストS突破を狙う選択肢もあったはず。だが、伊東監督は「(涌井は)今日1日空いたことで、明日万全で行ける。もし今日、負けたら涌井でと思っていた。やることはやれる。明日勝てればいい」と強気に言った。“1勝1敗で涌井で勝負”も想定内だ。エースに託した。【古川真弥】