侍ジャパンに「武士の献立」が準備される。8日に開幕する初開催の国際大会「プレミア12」に向けて3日、福岡で練習を開始。初戦の韓国戦後は台湾に舞台を移し、1次ラウンドから準々決勝までを戦い抜くが、小久保裕紀監督(44)の指令で食生活の充実が図られた。現地滞在ホテルに「おふくろの味」をテーマにメニュー作りを要請。ハンバーグ、コロッケなど常時60~70種類をバイキング形式で用意する。腹ごしらえ十分で世界一に挑む。

 腹が減っては戦はできぬ! 侍たちの心配の種は「KOKUBO’sキッチン」で解消される。前日2日のミーティングで小久保監督が伝えた。「もし台湾に行って食事が合わなかったら、どんどん自分に言ってきてください。ものすごくおいしい食事を用意しているので」。至高のメニューを並べることを宣言した。

 2年前の教訓がある。小久保監督の初陣となった13年11月の台湾遠征で現地の料理になじめない選手が続出。炭谷は「食が合わなくてファストフードばかり食べて、体重が1、2キロ増えてしまった」と振り返る。一般的にアジア系料理を好きな選手も多いが、慣れない地で好みの味に出合える保証はない。同監督も遠征後の日本野球機構(NPB)との会議で、初采配で見えた課題の1つに食事面を指摘していた。

 侍ジャパンは14年8月から食料品メーカーの明治の栄養サポートを受けている。同社担当者は小久保監督の指示を受けて、今夏ごろから台湾での宿泊先ホテルと入念な打ち合わせを開始。担当者は「珍しいメニューではなく、おふくろの味が一番好まれる」を基軸に置き、朝(ブランチ)、夜のメニューを作成。ハンバーグ、コロッケ、すき焼きなど万人が愛する一品から、めんたいこ、つくだ煮とご飯のお供も用意して、常時60~70品目のバイキングを準備している。日本人がコックが務めており、味もお墨付きだ。

 小久保“総料理長”は「だいぶ前からお願いしてきた。ナイターで帰りが遅くなることもある。食事はコンディションのベースになるから大事なこと」と食育を説いた。普段から栄養バランスを意識している筒香は「ありがたいです。いっぱい食べます」、坂本も「しっかり食べて、試合に備えたい」と感謝した。ルームサービスを頼むような「孤独のグルメ」にはさせない。「料理の鉄人」による「武士の献立」で、09年WBC以来となる世界一の称号をおかわりする。【広重竜太郎】

 ◆侍ジャパン食事メモ 13年の第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では主催者側から選手にミールマネー(食事代)が支給された。米国滞在中は宿舎に正式な食事会場はなく、選手各自が食事場所を探すスタイル。ナイター後に和食店を探すなど、不便な面もあった。同大会で主将を務めていた巨人阿部は「(遠征中も)食事会場が準備されているシーズン中との違いを感じた」と話していた。また台湾で行われた07年の北京五輪アジア予選では、選手村になっているホテルの食事に日本食がなく、食欲が減退する選手が続出。当初は外的なアクシデントを防ぐため外出禁止だったが、急きょ隣接するホテル内の日本料理店の利用が許可された。