侍ジャパンで初めて4番に座った筒香嘉智外野手(23)が、先制適時打を含む3安打1打点の活躍でベスト4に導いた。1次ラウンド全5戦で4番を務めた中村剛也内野手(32)が右太ももの張りで急きょ欠場。野手最年少の23歳の若侍が、負けたら即敗退の一発勝負、プエルトリコとの準々決勝で堂々と大役を全うした。チームは快勝し、4強進出。準決勝からは東京ドームに舞台を移し、19日の準決勝で韓国と対戦する。

 震える足を必死にこらえた。日本の4番としての初打席。筒香がどっしりと地に足をつけた。1回1死一、二塁。プエルトリコ先発シントロンをにらみつける。「引きつけて、コースなりに」。呪文のように頭で繰り返した。フルカウントからの6球目。外角に逃げるツーシームに黒塗りのバットを添えた。強い打球が三遊間を抜けていくのを見届けると「言われたところでやるしかない。国際大会で結果を出せたことは自信になった」。安堵(あんど)感が全身を駆け抜けた。

 1本出れば、若さと勢いで一気に加速するだけだった。3回の2打席目でも中前打を放ち、チャンスメーク。最終打席でもきっちり中前にはじき返し3安打猛打賞で暴れた。中村剛の欠場を受けて指名された4番。試合前のミーティングで小久保監督から「準決勝、決勝には回復できるかもしれない。中村(剛)をもう1度、その舞台に立たせよう」と重責を任された。

 無我夢中で球界の先輩たちの背中を追いかけた。「足を引っ張るわけにはいかない」。12日ドミニカ共和国戦で打球の目測を誤り捕球ミスをした。前日15日の試合後に大西コーチに外野ノックを志願。異例の“特守”に小久保監督は「ノックを受けていた姿になりふり構わない覚悟を感じた。今日はDHだったけど、かける思いをくんでの4番起用です」と最年少野手にかけた。

 不安を封じ込める強さが成長の証しだった。シーズン中も4番だけで出場したがチームの勝敗で気持ちの浮き沈みを周囲に悟られた。侍ジャパンでは中村剛、中田と球界屈指の主砲の振る舞いを見続けてきた。「打てるかどうか分からない。もし、空振り三振に倒れても堂々とベンチに戻る。それだけは絶対にやろうと思った」。日本の4番として、最大であり最低限の覚悟を持って挑み、結果も出した。

 悲願まで、あと2勝。「韓国も強い相手だと思うけど、僕たちは世界一になるために集まったチーム。チーム力で目標を達成したい」と、帰国後の韓国戦を見据えた。一発勝負の重圧、主砲不在の不安を筒香が、世界一への希望に変えた。【為田聡史】