日本ハム大谷翔平投手(21)の“新球”がベールを脱いだ。24日、練習試合の韓国・KIA戦(沖縄・名護)で、アリゾナキャンプから帰国後初登板。3回を1安打5奪三振で無失点に抑えた。最速153キロの直球に加え、現在習得中のチェンジアップも実戦初披露し、空振り三振を奪うなど手応えをつかんだ。2年連続開幕投手の舞台となるQVCマリン(3月25日、対ロッテ)同様の強風の中での好投に、「いい練習になった」と満足した。

 最大の収穫は、最後のアウトにあった。3回2死。唯一の左打者、イ・インヘンを迎え、大谷は“新球”を解禁した。今キャンプはブルペンで試投を重ねてきたチェンジアップ。実戦初披露は、1ストライクから2球続け、空振り三振を奪った。「カウントも取れたし空振りも取れた。初めてにしては悪くないと思います」。打者はタイミングを外され、体勢を大きく崩しながらぶざまに回転した。

 プロ入り1年目には、試合でチェンジアップを使ったこともある。だが精度が低かったことと、他の球種で十分組み立てられることから、2年目以降は封印してきた。

 昨季はパ・リーグの投手3冠も獲得。すでにトップレベルの実力を備えてい るが、常に進化を目指すのが大谷の信念。「僕も左打者。フォークは“引っかければいい”という作業になる。外に逃げる球があれば、内角のスライダーや直球も生きる」。二刀流であるからこその感覚。対右打者(昨季1割5分4厘)よりも被打率の悪い左打者(2割7厘)には、特に有効な球種となる。

 米アリゾナキャンプ中には、メジャー通算601セーブで、同球種の使い手でもあるトレバー・ホフマン氏(現パドレスGM補佐)から握りなども教わった。この日投げたチェンジアップは、教わる以前から自分で練習に励んできたものだが、握りや投げ方は「ちょこちょこいじってます」。進化している最中でもあり、同GM補佐の言葉も、少なからず影響を与えているようだ。

 22日には2年連続で開幕投手を務めることが発表された。この日の名護は試合開始の時点で7メートルの強風が吹いており、開幕戦の舞台となるQVCマリンの予行演習としては絶好の環境でもあった。1回の先頭打者に左翼フェンス直撃の二塁打を浴び、2四球も与えた。「できれば1球で(環境に順応し)修正したい。切り替える途中にやられたら悔いが残る」と反省したが、2、3回は立て直して3者凡退。「(風が)かなり強かった。いい練習になった」と、手応えをつかんだ。

 昨秋の「プレミア12」から、投手としては18イニング連続無失点。「自分の中で消化できる課題に、しっかりと取り組んでいきたいです」。2年連続開幕勝利へ、盤石の調整を進めている。【本間翼】

 ◆大谷の球種 花巻東時代から豊富で、直球を軸にカーブ、スライダーなどを駆使した。フォークは2年冬に同期から学び、スライダーは「横投げを防ぐ」目的で佐々木監督から“禁止令”が出た時期もあった。プロ入り後も、取捨選択しながらステップアップ。最大の武器である最速162キロの直球、120~130キロのスライダー、140キロ近いフォークが軸であることは、入団時から不変。1年目には投げていたチェンジアップは一時封印し、今キャンプで再度練習中。2年目のキャンプでは、120キロ前後のパワーカーブにも取り組んだが、現在はそれよりも遅い110キロ台のカーブを使っている。