楽天が逆転勝ちし、14日から13日間続いていた連敗を9で止めた。1点を追う6回、選手会長の銀次内野手(28)が殊勲の2点適時二塁打。打撃不振だった今江の2軍再調整など打順組み替えも実り、本拠地史上最多2万6786人のファンに久々の勝利報告。9回は12日ぶり登板の守護神松井裕が締めくくった。

 執念が届いた。1点を追う6回2死一、二塁。4連続ファウルで食い下がる銀次が、外角低めフォークにバットを伸ばした。右足スパイクで踏ん張り、最後は右手1本でミート。フラフラと上がる打球が中前で弾み、中堅の陽のスライディングをかいくぐる間に走者2人が生還。「ほんと執念です。監督をはじめ、みんながこの2週間苦しい思いをしてきた。どうしても打ちたかった」。06年以来10年ぶりの9連敗に終止符を打った。

 ようやく、心から笑えた。選手会長として、嶋不在の中で喫した連敗に人知れず心を痛めてきた。「とにかく気持ちが折れないようにと思ってきたけど…。何回も折れそうになった」。打撃の調子が思うように上向かず、打順は7番にまで下がった。それでも日課の早出練習は怠らず、試合中は節目でマウンドへ駆け寄り投手に声をかけた。「ピッチャーは孤独だから。言うことは何でもいい。行くことに意味がある」。嶋が果たしてきた役割を全力で埋めようと努めた。

 7回2失点で踏ん張る先発塩見を選手会長が援護し、9回は守護神の松井裕が締めくくった。梨田監督は「勝因は、気持ちでしょうね」と選手の奮起をたたえる。試合前は打撃不振に苦しむ今江の2軍行きに加え、松井稼の2試合連続ベンチスタートを決断。「流れを変えないといけないという気持ちもあった」と勝負手を実らせた。

 苦しみながらつかんだ15日ぶりの白星。今も12の借金が残るが、苦戦をくぐり抜けたチームは最後まで諦めない粘りと経験を得た。梨田監督は「若手の経験は個人ではなくチームの財産になる。1つ勝ったからいいというわけではなく、まだマイナスが残っている。明日もあるからね」と引き締めた。この1勝を再浮上への起爆剤とする。【松本岳志】