広島黒田博樹投手(41)が23日、日米通算200勝を達成した。

 天国からどんな言葉をかけてくれるだろう。黒田の胸にはいつも両親の教えが宿る。「信念を貫き通す」。元南海の父一博さん、高校教師を務める母靖子さんの元に生まれた。黒田が照れくさそうに言う。「両親がいないと僕も存在しない。一番影響を受けた存在だと思う」。8年ぶりの日本球界復帰も「両親ならどう言ったかなといろいろ考えた」。答えは出なかったが、最後は信念を貫いた。

 上宮時代の逸話が残っている。ひたすら走らされた合宿。チームメートの親がシャワーや食事など、隠れて自宅で世話を焼いてくれたが、黒田の母は合宿所へ戻らせるよう頼んだ。困難に立ち向かえ、というメッセージ。「お母さんの存在なくして、今の黒田はない」とコーチ、監督として指導した田中秀昌氏(近大野球部監督)。3年間控え投手でほとんど投げられなくても、やり通した。

 黒田を担当した広島苑田聡彦スカウト部長は初対面の両親の姿を覚えている。「スーツをピシッと着てハットをかぶった、もの静かなお父さん」と「厳しく、礼儀正しく、心配りの出来るお母さん」。厳しく育てられていると感じた。「礼儀とあいさつが出来る子は大丈夫」。獲得へ迷いはなかった。黒田の専大進学も両親の説得。尊敬する先輩を追い関西の大学進学を希望したが、両親は「関東でやりなさい」。スカウトの目に留まる存在になった。

 母靖子さんが亡くなった02年。2桁勝利を挙げた黒田は報道陣の前で涙した。「精神的にきつかったし、どうしたらええのか分からんときもあった」。あれから14年。「200勝する選手になるとは思っていなかったんじゃないかな」。たどり着いた大記録を誰よりも伝えたい人だろう。

 今年5月29日には墓前に誓ったことがある。「一生懸命、最後までやり抜く」と。黒田にはまだやらなければいけないことがある。【池本泰尚、前原淳】