ウル虎の夏祭りや~。阪神福留孝介外野手が、39歳3カ月で史上最年長サイクル安打を達成した。2回に今季甲子園初アーチとなる決勝5号ソロを放つと、4回に中前打、5回に三塁打。最後は6回2死満塁での走者一掃二塁打で決めた。福留は03年以来、自身2度目のサイクル安打。2球団にわたる偉業は史上初で、今季最多の4万6803人を動員した甲子園は、歴史的な一夜となった。

 黄色いスタンドが波打っていた。6回。セカンドに到達した福留は、受け取った花束を控えめに掲げた。この回2死満塁から、山井の114キロカーブを捉え、左翼手工藤のグラブを越える二塁打として偉業を達成した。「追加点を取ることしか考えていなかったです。捕られるかどうかという打球でしたけれども、なんとか抜けてくれてよかった」と笑顔で話した。

 チーム13安打8得点の号砲を鳴らしたのも福留だった。先頭で迎えた2回。吉見の内角低めのスライダーを技ありスイング。39歳の打球は浜風を切り裂き、右翼スタンドに低い弾道のまま突き刺さった。今季阪神の左打者では初の甲子園アーチで景気づけ。4回には中前打、5回には右翼越えの三塁打を放ち、3打席でリーチを掛けると、6回の4打席目に自身13年ぶり2度目のサイクル安打を記録した。史上最年長達成だ。「この年で出来るとは思ってもみなかった。記録を作るためにやっているわけではないので。たまたまです」と控えめに喜んだ。

 家族の笑顔が虎の4番を突き動かす。今月中旬には球宴休みを利用して家族でディズニーリゾートに出かけた。長女桜楓(はるか)ちゃん(5)の希望をかなえるために、ドレスを用意してメークや髪形をセットしてくれるプランを早くから申し込んだ。プロ野球選手にとって家族と過ごす夏休みはないに等しい。だからこそ、家族との時間を大切に過ごす。ドレスを着て帰りの新幹線でスヤスヤと眠る愛娘の寝顔がパワーになった。

 一度ですら難しい偉業に、再びたどり着いた。「球場の雰囲気がすごかった。これだけのお客さんの前で、最高」と万感の思いを口にした。サイクル安打を達成した直後の6回にベンチに下がる予定だったが、金本監督の粋な計らいで虎党にあいさつするために7回の守備に就いた。そんなベテランを右翼スタンドは大声援で出迎えた。福留に引っ張られたチームは中日と並ぶ4位に浮上。まだ下を向く時期ではない。背番号8がその姿勢をバットで示した。【桝井聡】

 ▼福留が中日時代の03年6月8日広島戦以来、自身2度目のサイクル安打を達成した。サイクル安打は今年の7月20日大島(中日)以来69度目(64人)で、複数回記録したのは95、97、99年ローズ(横浜)3度、48、50年藤村富(阪神)2度、82、91年松永(オリックス)に次いで4人目。過去の3人は同じ球団でマークしており、2球団で記録したのは初めてだ。また、福留は現在39歳3カ月で、83年山本浩(広島)の36歳6カ月を抜いて史上最年長サイクル安打となった。