主将の一打が、エースを救った。巨人坂本勇人内野手(27)が、同点の9回1死満塁から決勝の左前適時打を放ち、シーソーゲームに終止符を打った。先発菅野が、左足親指の血豆が破れた影響から4回2失点で降板。今季最多タイの7投手の継投でつなぎ、粘り勝った。チームは今季最長タイの6連勝を飾って、首位広島に5・5差に迫った。

 4時間38分の熱闘を制した興奮が、坂本の体内からほとばしった。3度、追いつき、守護神中崎から決勝点を奪った大きな1勝。それでも、ヒーローインタビューで歓声に応えた主将の視線は、もう明日の一戦に向けられた。

 坂本 明日の試合がさらに大事。集中して、何とかモノにできるようにしたいです。

 同点の9回1死満塁、左前打で試合を決める勝ち越し点を奪った。その一打を振り返ったのは「いい形でつないでくれたので、犠牲フライでもという気持ちで」の一言だけだった。

 ベンチで祈るように、戦況を見守るエースを救う一打だった。先発菅野が左足親指の血豆の影響もあって、4回2失点で降板。「チームに迷惑をかけた」と責任を痛感する菅野を勇気づけるには、勝利が最高の薬だった。力みからか、序盤3打席は凡退したが、8回にチャンスメークし、9回に勝利を決めた。

 背中からにじみ出るオーラを、遊撃手の位置で感じ取ってきた。シーズン序盤、坂本は菅野にこう声を掛けた。「田中将大(ヤンキース)やマエケン(ドジャース)とは違うぞって言ってきたけど、今年はスーパーピッチャーやなと感じるわ」。普段、褒めることがなかった主将の称賛にエースは照れた。スーパーと認めた男に泥を塗るわけにはいかなかった。

 逆転優勝への光が、差し始めた。チームは今季最長タイの6連勝を飾って、最大11ゲームに開いた差は半分の5・5に縮まった。高橋監督は「アクシデントうんぬんではなく、厳しい戦いを取れた。選手がよく頑張ってくれたのに尽きる」と評価。「今日は今日で終わったこと。明日に向けてやっていく」と主将と同じように2戦目に気持ちを切り替えた。【久保賢吾】

 ▼巨人は逆転勝ちで6連勝。首位と5・5ゲーム差以内は6月17日(5差)以来で、7月23日にあった最大11ゲーム差が半分に縮まった。坂本が9回の勝ち越し打を含む2安打。今季のV打はチーム最多の11度目となった。7月23日DeNA戦からの最近10試合で38打数21安打、打率5割5分3厘と大当たりの坂本だが、10試合のうち9試合が2安打以上で、28日広島戦からは7試合連続マルチ安打中。2リーグ制後、巨人の連続マルチ安打は54年与那嶺、85年中畑の8試合が最長で、坂本が今日の試合で2人の記録に挑戦する。