出遅れを取り戻す快投だ! 広島福井優也投手(28)が投打にわたる活躍で勝利に導いた。投げては6回2失点に抑え、打っては6回、菅野から逆転劇を呼び込む二塁打で口火を切った。前半戦は不調で2軍暮らしが続いたが、25年ぶり頂点へ頼れる右腕が復調を印象付けた。広島はリーグ最速70勝目。追走する巨人を倒し、悲願達成が見えてきた。

 勝利への執念だった。5回、マウンドで打球を右膝蓋(しつがい)骨に受けた福井が、6回の攻撃で歯を食いしばって走った。右中間への打球を二塁打にし、続く田中の右越え二塁打で、同点のホームにかえってきた。

 エース菅野との投げ合いだった。4回、1死三塁から阿部に投じたスプリットを右翼席へ2ランされた。「菅野が良かったので、これ以上はやれない」。気持ちを切り替えた。5回2死では、菅野の速い打球がはねて右膝を直撃。「立てないと思った」ほどの痛みも、ベンチに戻ると消えた。「アドレナリンも出ていた。菅野に打たれて、当てられた。何でもいいので塁に出ようと思った」。直後の福井の好打と激走が勝ち越し劇を呼んだ。

 勝ちに飢えていた。25年ぶりの優勝へ突き進むチームを2軍で見ていた。今季、投手キャプテンを任されながら、過剰な意識が力みとなり、投球に影響した。勝ち星が伸びず5月9日に2軍降格。2カ月以上、2軍で過ごした。1軍では許される登板日のマイペース調整も、登板2日後の休養もない。当初は焦りもいら立ちもあった。態度にも出ていた。だが済美(愛媛)時代に務めて以来のキャプテンに「背中で引っ張る」責任を再確認した。2軍でも結果だけを求め、その積み重ねで信頼を取り戻し、自信にした。

 「前半戦は帰ってこない今、チームの足を引っ張らないようチームの力にならないといけない」

 遅れてきた投手キャプテンの活躍でマジック20を点灯させた。緒方監督も「試合をしっかり作ってくれた。次回にも期待できる投球だった」と復調を歓迎した。四半世紀も待ち続けた歓喜のフィナーレへ、チームに勢いをつけた。【前原淳】

 ◆福井と巨人 済美2年のセンバツで優勝。3年時に高校生ドラフトで巨人から指名を受けたが、4巡目の低い評価に「プロでやっていく自信がない」として拒否。1年間の浪人を経て早大に進学した。

 ◆福井と菅野 早大4年時の10年明治神宮大会決勝で、東海大3年の菅野と先発対決。2-1で早大が初優勝し、福井は6回1失点で勝ち投手になった。7回からは大石(現西武)が2回、斎藤(現日本ハム)が1回とドラフト1位トリオの継投が決まった。