「超変革」2年目の幕開けだ。阪神は9日、野手組の甲子園と投手組の鳴尾浜に分かれ、秋季練習を開始した。金本知憲監督(48)は初日から原口文仁捕手(24)を熱血指導。4月下旬に支配下登録されて以降、ほぼフリーに打たせていた打撃の改造に着手した。中軸も任せられる捕手タブチくんならぬハラグチくんを目指し、今季11本塁打からのスケールアップを図る。

 グラウンドコンディション不良のため、金本阪神2年目は甲子園室内でスタートした。CSに進出できなかった悔しさをかみしめる秋季練習初日。高山、北條、中谷らの若虎が再出発の快音を響かせる中、金本監督が1対1で熱血指導に乗り出したのが原口だった。

 金本監督 すごく数字を残してくれたけど、偏ったスイング、型にハマりすぎたスイングをしている。結果が出過ぎていたから控えていたけど、シーズンが終わってちょうどいい機会。彼も向上心があるからね。

 育成からはい上がり、107試合に出場。規定打席には約80打席足りなかったが、4番も張って打率2割9分9厘。福留と並ぶ日本人最多の11本塁打もマークし、46打点を挙げた。好成績を残したため、短所に目をつぶって指導を控えていたという。だが、時間のある秋こそ好機。このオフもっと本塁打の打てる打ち方に変えたいと“タブチくん化構想”を抱いていた中軸候補への指導は、60分を超えて熱を帯びた。

 金本監督 内角を攻められると限界がきた。3割3分から3分ぐらい落ちて。狙ってタイミングを取っていてもファウルになったり。ライト前ヒット、ほとんどないんかな。センター前がせいぜいで幅としては狭い。彼も満足していないし、やばい、今の打ち方では限界があると思っている。

 原口へのメスは今季初めてで、厳しい内角攻めに対処すべく右肘の使い方などを助言。点ではなく線でとらえることで確率が上がり、飛距離も伸びる。目標はかつての田淵幸一のような1発長打のある捕手への成長だ。

 原口 僕も同じことを感じていたし、レベルアップするために、いいアドバイスをいただきました。しっかりやっていきたいです。

 監督就任間もない1年前、初めて秋季練習を視察した日に、真っ先に指導したのも当時育成の原口だった。「生え抜きで岡田さん以来、30本塁打した選手がいない。右も左も85年以来、誰もいない」。そう残念がりながら「チームで一番振れるんじゃない?」と壁を破る筆頭候補とホレ込んだ目に狂いはない。がんばれ! ハラグチくん。二人三脚のアーチスト化計画が始まった。【松井清員】

 ◆阪神捕手のホームラン打者 田淵幸一の在籍中320本塁打は、阪神史上2位(最多は掛布雅之349本塁打)。74、75年と2年連続40本塁打以上を放ち、75年には43本で本塁打王となった。10年にメジャーから加わった城島健司は、同年28本塁打。矢野輝弘(後に燿大)は03~06年に4年連続2桁を記録し、05年には自身最多の19本塁打でVに貢献。日本一となった85年の正捕手木戸克彦も13本塁打した。

 ◆がんばれ!!タブチくん!! いしいひさいち作のギャグ漫画。主人公は阪神在籍時の田淵幸一がモデルで、掛布雅之や江本孟紀、ヤクルト安田猛らもモデルとなり登場した。79年にはアニメ映画化され、タブチ役の声優は俳優西田敏行。