フルスイングが持ち味だが、今季は状況に応じてコンパクトなスイングに切り替えてきた。ややつまり気味でも、一二塁間をしぶとく破り、得点圏の走者をホームに迎え入れる。

 そうやって、ここまでリーグ最多57安打、そして39打点を稼いできた。

 ちょうど1試合1打点ペース。これを上回る例を求めれば、パ・リーグなら85年落合までさかのぼることになる。

 リーグ最多184得点を挙げる好調な打線の象徴が、伝統の背番号3を背負う男だ。それでも浅村は「長いシーズン、打てる時もあれば、打てなくなる時もあります」と冷静に言う。

 言葉数が多い方ではない。結果を示すことで、チームを引っ張るタイプの主将。周囲はそう見る。

 だが本人は首を振る。「結果で引っ張る、というのは少し違います。自分は覚悟を持って野球をしている。覚悟で引っ張る主将でありたいと思うんです」

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 覚悟がにじむプレーがあった。

 17日、ロッテ戦。同点で迎えた、4回表1死満塁の場面で、浅村は打席に立った。

 追い込まれた浅村は、低めの変化球になんとか食らい付いた。しかし打球は勢いを欠き、遊撃手平沢の守備範囲に転がった。

 6-4-3の併殺なら勝ち越せない。浅村は懸命の走りから、最後は一塁へヘッドスライディングし、間一髪でセーフになった。

 二塁で封殺されると同時に、一塁上を確認した秋山は「驚きました。ハッとした」と振り返る。

 「確かに負けられない試合でした。ロッテは勝てていなかったから、次にソフトバンク戦があることを考えても、どうしても勝っておきたかった」

 3点を先制されて、何とか追いついた直後だった。点が入らなければ、シーソーゲームに持ち込まれ、勝敗が読めない状況になる。

 「あの1点は大きかった。それが浅村にはよく分かっていたのだと思います。絶対に勝ちたいという気持ちが伝わってきた。実際、あれが決勝点になった。ボールを前に飛ばしさえすれば何とかなる。そういうことも教わった気がします」

 チーム最年長の渡辺直も「久々に鳥肌が立った」と言う。たとえ思うような打撃ができなくても、何とかしてチームを勝ちに導く。浅村が示したのは、まさに「覚悟」だった。