浅村はそうやって、こだわりだったフルスイングよりも、チームの勝利を優先させてきた。

 本塁打の場面、カウントはノースリー。本来なら打ちにいく場面ではない。

 しかし変化球が3つ続けてボールになったことなどを鑑み、直球が甘いコースに来る可能性が高い状況を踏まえ、1球限定でリミッターを外した。

 フルスイングで放物線を描く、久々の快感。節目の100号本塁打とあって、満員のスタンドからの祝福の声にも包まれた。チームに尽くしてきたご褒美のような瞬間だった。

 それでも浅村は「これをきっかけに、オーバースイングにならないように。それだけは気をつけます」とすぐに表情を引き締める。

 調子は揺らぐ。結果も揺らぐ。だからこそ、揺るがぬ覚悟でシーズンを戦い続ける。チームを引っ張る。【塩畑大輔】