<オープン戦:ソフトバンク4-0横浜>◇6日◇福岡ヤフードーム

 ソフトバンク杉内俊哉投手(27)が自身初の開幕投手を「当確」させた。横浜戦でオープン戦初先発し、7回を2安打無失点。9奪三振の快投を演じた。3球勝負を心掛ける「速攻」で打者15人連続凡退など文句なしの内容。球数は84球で1人平均3・5球という省エネ投球もみせた。もう1人の開幕候補、新垣渚投手(27)は8日の広島戦に先発する。

 スコアボードのSランプがピコピコと点灯した。開幕投手に立候補している杉内が首脳陣とファンの前で鮮やかなデモを決めた。

 初回1死でジェイジェイに左前打。だが、ここからが昨年チーム最多勝(15勝)の左腕だ。金城をスライダーで空振り三振に切ると、2回から4イニング連続で3者凡退。6回1死で石井に二塁打を浴びるまで15人連続凡退の圧巻マウンドを演じた。3ボールまでいったのは1度(四球)。打者24人中18人が初球ストライクと抜群のテンポだった。「3球勝負しようと勝己(山崎)と話していた。いい具合に進められた」。

 7回2安打無失点。4番村田へのチェンジアップによる空振り2個を含む、9奪三振。直球の最速は141キロながらスライダーとチェンジアップがさえた。自主トレから重さ1キロの鉄球を地面に向かって投げるキューバ方式の練習に取り組んだ。指先の感覚を磨き、関節の可動域が広まる効果が投球に表れ始めた。7人の右打者を並べた横浜打線を簡単に料理。「悪くはないね。逆球が多く、打ち損じてくれた部分もある。内角はもう少しだけど、外角は良かった。後もう1回投げると思うし、監督にアピールして開幕に投げられるようにしたい」。笑みがこぼれたのも無理はない。

 先発予定だった2月25日西武戦は左手中指に違和感を覚え、緊急回避した。オープン戦初登板した1日巨人戦は中継ぎで2イニングだった。左ふくらはぎ痛の影響で春季キャンプは投げ込みが足りず、この日はスタミナ面も課題の1つだった。あまりの快投で予定の6回で66球。急きょ1イニング延長し、結局7回で84球。それでも杉本投手コーチは「投げ込み不足の解消はできた」と評価した。

 開幕ローテーションを決める「有権者」たちは絶賛の嵐だった。王監督は「貫録というか、余裕の投球」と目を細めた。注目の開幕投手については「皆さんにどうこう言う段階じゃない。明後日(8日)も候補が投げますから」とはぐらかしたが、文句なしの内容を見せられた杉本コーチは事実上の「確定」を認めるしかなかった。「渚(新垣)と一騎打ちでしょう。俊哉が開幕戦にいく可能性は非常に高いとは思う」。

 中6日でのローテ調整を考えれば、3月20日の開幕戦から逆算して2週間前のこの日に杉内が先発したのも説明がつく。8日広島戦に先発する新垣を待って、「当選」が発表される。選ばれれば自身初となる杉内。1人平均3・5球の省エネ投法を振り返り「今日みたいにスライダーを振ってくれたらあるんじゃない」と、開幕戦での3球勝負プランを思い描いた。本命候補は最善を尽くした。【押谷謙爾】杉内苦闘メモ

 ◆順調

 2月9日の第3クールでフリー打撃に登板。魔球ナックルを4球試投するなど余裕の52球。

 ◆左ふくらはぎ張り

 第3クール初日の9日から症状があり、10日は全体練習をこなしたが、11日は「違和感があった」とキャッチボール、ストレッチなど軽めの調整で終え、第4クールは別メニュー。16日からの紅白戦を回避。

 ◆ブルペン再開

 16日、1週間ぶりに投球再開、ブルペンで捕手を立たせ27球、座らせて50球。翌17日には熱投170球。

 ◆志願登板

 20日の紅白戦に登板、2回2安打無失点。

 ◆左中指に違和感

 23日のブルペン投球中、左手中指にマメをつくり、25日のオープン戦西武戦の先発回避。

 ◆貫録初登板

 3月1日の巨人戦に6回から3番手で登板、2回5K、無失点の完全投球。