<オープン戦:阪神4-7楽天>◇7日◇スカイマーク

 タテジマ1号はマー君からだ!

 阪神新井貴浩内野手(31)が、楽天とのオープン戦(スカイマーク)で移籍後初本塁打を放った。1点を追う4回裏1死一塁、楽天先発の田中からライナーで左翼席に突き刺した。最初の打席こそ三振を喫したが、6回の第3打席でも技ありの中前打。母校駒大の付属高校、駒大苫小牧出身の田中に貫録の圧勝だ。待望の初アーチも飛び出し、FA砲はいつでも開幕OKの状態に上げてきた。

 記念すべき「1号」にこれ以上の舞台設定はなかった。1点を追う4回1死一塁、マウンドには昨季のパ・リーグ新人王の田中だ。カウント1-0から新井は内角高めの145キロ直球に反応する。普通ならポップフライに終わりそうな難しい球をうまく、激しくたたく。打球はライナーで左翼席に突き刺さった。推定130メートル、驚きの弾道だった。

 新井「うまく体が反応してくれました。ホームランはやっぱり気持ちがいいですね。打てるに越したことはないし、良かった」。

 田中「やっぱり全日本の4番ですから。スイングも速くてコンパクトでした。本塁打についてはしょうがない。引きずることはなかった」。

 阪神移籍後の実戦10試合目、阪神ファンが、そして本人が待ち望んだ初アーチだ。しかも田中から、一時は逆転する価値あり弾だ。努めて淡々とベースを回る新井に、スタンドからは「待ってました」の拍手がわき起こった。

 「いいピッチャーなんで楽しみ」。新井の母校、駒大の付属校にあたる駒大苫小牧高出身の田中に注目し、田中も「先輩」として慕っていた。試合前、打撃ケージ裏であいさつを受け、満面の笑みでガッチリ握手。「お手柔らかに頼むよ」。前哨戦ではジョーク交じりに、ひと回り年が違う「弟」を持ち上げた。そして、本番では“先輩”の貫録をたっぷり見せつけた。

 初回の初打席こそカウント2-1から内角低めの厳しいコースにきたスライダーに手が出ず、見逃し三振に倒れた。しかし、その後に本塁打、さらに6回の第3打席でもフォークを中前にはじき返し、3打数2安打をマークした。「やっぱり良い球を投げる。スライダーにしても、1つ1つのボールがすごい。打ち負かした?

 そんなことないっすよ。え~、そんなことないです。そんなことないです」。試合後は必死でかわいい後輩を褒めたたえたが、完勝と言える内容だ。

 岡田監督も期待のFA砲が放った1発に思わずホオを緩めた。「久しぶりにいい当たりを見た。いい音がしたな。本拠地が甲子園になったらホームランは計算できんけど、あの当たりなら問題ないわ」と絶賛した。これでオープン戦の通算成績は16打数7安打、打率4割3分8厘。28日、開幕の横浜戦に向け、確実に階段を上っている。

 8日は西武戦(皇子山球場)に参加せず、鳴尾浜で体を動かし、9日ロッテ戦(スカイマーク)で実戦に戻る予定だ。「すべては開幕。残りの期間をしっかりやっていきたいですね」。照準をしっかり合わせたその視線は、間違いなく力強い。【佐井陽介】