<楽天4-8ソフトバンク>◇6日◇Kスタ宮城

 育成選手からはい上がってきたソフトバンク小斉の1発が、打線に勢いを呼び起こした。3回。完ぺきな1発を楽天永井に見舞った。カウント1-1からど真ん中にきた139キロ直球を見逃さず、右中間席まで運び去った。「本塁打はいずれ出ると思っていた。よく飛んでくれました。本当に気持ちよかったです」。初本塁打の感触をかみしめるように、ゆっくりとダイヤモンドを1周した。育成ドラフト出身選手の初本塁打。70年以上のプロ野球史に刻まれる1発となった。

 プロ3年目。背番号は93から55に変更され、心機一転で臨んだ。1月のグアム自主トレでは、わずか1週間で左ふくらはぎ痛でリタイア。そこから体幹強化に専念。10種目以上の腹筋を繰り返し、多い時には1日で600回以上もこなした。「1年目に腰を痛めて、自分のスイングができない時期があったので」。今では試合前、試合後の腹筋運動が日課。地道な努力が花開いた。

 不屈の闘志もまた、この男の強みでもある。キャンプ、オープン戦と1軍で「完走」したが、開幕3日前に2軍行き。腐らなかった。打率でリーグトップの4割1分3厘を残し4月下旬に再昇格した。

 チームは5試合連続2ケタ安打、開幕以来となる今季2度目の5連勝で、19日ぶりとなる貯金生活に戻った。「あそこ(3回)で逆転できたのが大きかった。永井には前回、完封されてたからね。(打線も)やっとこさ、エンジンがかかってきた。これからどんどんね」。試合後、王監督の表情も緩みっぱなし。その主翼を担ったのはもちろん、小斉のバットだった。【石田泰隆】