<阪神4-3オリックス>◇8日◇甲子園

 泥だらけのユニホームが勲章だった。阪神新井がバットで、守備で、走塁で、そして熱いハートで貯金「20」に大貢献した。

 オリックスに逆転を許した直後の6回裏だった。先頭打者で打席に立ち、山本のスライダーを振り抜いた。打球が三塁線を抜けると新井はちゅうちょなく一塁を蹴り、二塁に気迫のヘッドスライディングだ。「来た球を打とうと思っていた」。5球続けて外角を攻められていたが、迷いはなかった。金本の右飛で三塁に進塁。そしてフォードの犠飛で同点のホームを踏み、逆転への流れをつくった。

 前日の試合後、自宅でスイッチを入れたテレビに思わずかじりついた。スポーツニュースで取り上げられていたのは、メジャー初完封を飾ったドジャース黒田の雄姿。同時期にFAで広島を離れ、新天地での活躍を誓い合ったかつての仲間の笑顔に心をくすぶられた。

 「腕をビュッと振ってましたよね。でも今までも悪くなかったんでしょ?

 援護がなくて不運な面もありましたから。本当に自分のことのようにうれしいですよ」。

 どんな時でもナインを信じて力投を続けていた黒田の姿に、新井も触発されていた。4回には山本の初球を体勢が崩れるぐらいに思い切りフルスイングした。上空に高々と上がった打球は浜風に乗り、レフトポール際の三塁アルプス席に着弾する今季第8号ソロ。「思い切って振ろうと思っていた。高く上がり過ぎたけど、うまく風に乗ってくれたんじゃないですか」。初回にも安打を放ち、今季6度目の猛打賞の活躍。三塁打が出れば「サイクル」の大暴れだった。

 守ってはスーパーファインプレーだ。1点を勝ち越した直後の8回1死二塁。一、二塁間を抜けようとした大引の打球に飛びつき、アウトにした。抜けていれば、間違いなく同点の場面。「いつも助けてもらっているから」とさらり言う。広島時代には9年間、1081試合で99失策を記録したが、阪神ではここまで57試合無失策だ。「優勝したい」と移籍してきた阪神。その思いが、すべての全力プレーに凝縮される。

 新井は言った。「勝って、また明日頑張りたいです」。この姿勢が、チームの独走を後押ししていく。【福岡吉央】