<日本ハム3-1ソフトバンク>◇28日◇札幌ドーム

 日本ハムに優勝マジック「29」が点灯した。2位ソフトバンクとの直接対決。梨田昌孝監督(56)が執念の采配で勝利を手繰り寄せた。1失点でも不安定な投球を見せていた先発藤井秀悟投手(32)を5回途中で交代する勝負手を打ち、追撃を断った。リリーフ陣を惜しげもなくつぎ込み、6投手の継投で3-1で逃げ切った。インフルエンザという予想外の敵も乗り越え、2年ぶりのV奪還へ大きく前進した。

 自信に裏打ちされた、直感が節目の一戦でさえた。梨田監督が大胆かつ非情なタクトで、2年ぶり頂点への道を照らした。1点リードの5回1死一、二塁。ベンチを飛び出し、先発藤井を見切った。勝利投手の権利目前ながら、白星へ執着した。「勝負をかけなくちゃいけないという気持ち。迷いはなかった」。個人に対してではなく、チームへの温情を優先した。勝利に徹し、一手を打った。

 薄氷の継投策の最大要所を、2番手江尻が締めた。榊原-宮西とつなぎ、最後は建山-武田久の必勝継投までこぎつけ、優勝マジック29をともした。6投手をつないで、2位ソフトバンク打線を沈黙させた。梨田監督は「勝ったから、こうやって言えるだけであって、何てことはない」と流したが、局面を見極める目が大きな勝因になった。

 インフルエンザ禍で足踏みが続いていたマジック点灯で、停滞期を抜けた。インフルエンザ感染して離脱、この日復帰した宮西を即起用。6回2死から1回1/3のイニングをまたぐ、難役を託した。2年目ながら中継ぎ左腕エース的な存在。「今までの実績からして信用しようと思った」と明かした。

 就任2年目で選手を掌握し、築いたきずなの結晶のような総力戦。舞台裏でも、心血を注いできた。裏方スタッフのために、こっそりと高級な焼酎、日本酒などを差し入れ。遠征先の食堂では一緒にテーブルを囲み、杯を交わすこともある。グラウンドでの厳しい判断も最善策と受け入れられる土台を自力で築いてきた。

 歓喜の胴上げが、現実味を帯びてきた。それでも梨田監督は「マジックはあまり意識したことがない。残り1つ、2つになったら考えるよ」と淡々と話した。全員野球で足並みをそろえて進んできた険しい道に、ゴールが見えた。【高山通史】

 [2009年8月29日8時18分

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