<広島4-0横浜>◇5日◇マツダ

 広島が伏兵の奮起で白星をもぎ取った。2回1死一塁で岩本貴裕外野手(24)が先制適時二塁打。さらに、9年目の山本芳彦内野手(26)がプロ初タイムリーで続いた。この回3点をもぎ取り、先発スタルツに対セ・リーグ初勝利となる4勝目をプレゼント。5カードぶりのカード勝ち越しを決めた。

 白い糸を引くように、低空ライナーで左中間を破った。これが岩本の打球だ。2回1死一塁。横浜先発小杉の外角高め速球を逃さない。的確にミートし、外野手の間を抜く。一塁走者広瀬が先制のホームを踏んだ。2年目のホープが、貴重な適時二塁打を放った。

 「あそこしか飛ばないんですよ(笑い)。甘い球でしたから。思い切っていくつもりでした。いい形で出てくれたと思います」。

 逆方向への打球は岩本の持ち味だ。後半戦は全9試合でフル出場する。6連敗中もスタメン起用され続けたのは将来の大砲を育てるチーム方針。首脳陣の思いに応えた。一塁守備でも7回に下園の痛烈なゴロを好捕するなど、好守を連発。野村監督も「球際に強いプレーがよかった。大きかった」とたたえた。

 チャンスをつかもうとするハングリー精神が猛攻を呼んだ。岩本が適時打を放った直後の2回1死二塁。今度は山本芳が内角高め速球に詰まりながらも中前に落とす。「いつも、これが最後だと思ってやっています」と話す9年目の内野手がプロ初タイムリー。7日巨人戦(東京ドーム)から、右手首骨折で離脱していた栗原が復帰予定。ポジションが同じ山本芳は、そんな境遇で底力を発揮した。

 勝ちたい試合だった。6日に「原爆の日」を控え、この日を「ピースナイター」として、球場全体で平和を祈った。観衆は緑色のポスターを掲げ、原爆ドームの高さを赤いラインで染めた。広島で生まれ育った岩本も神妙な表情で言う。「明日は原爆の日。この日は自分にとって特別です」。幼少時には祖父母から戦争の恐ろしさを聞いた。中学生になると、平和記念資料館に足を運んだ。亜大に進学した東京でも、8月6日午前8時15分に黙とうを欠かさなかった。「平和のなか、環境も整っているなかで野球をできて感謝しないといけない」。ひと振りに魂を込めた。

 チームは横浜3連戦を2勝1敗。5カードぶりの勝ち越しを決めた。6日からは巨人、阪神と激しく首位争いを繰り広げる上位2チームと対戦が続く。5位に甘んじるカープの意地が試される。【酒井俊作】

 [2010年8月6日11時30分

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