<中日4-3広島>◇14日◇ナゴヤドーム
落合竜がシーズン球団記録にあと「2」と迫る今季9度目のサヨナラ勝ちで、3連勝を飾った。延長12回無死一、二塁から荒木雅博内野手(32)が内野陣形を見た瞬時の判断でバントからヒッティングに切り替え、鮮やかなサヨナラ打を放った。前日、落合博満監督(56)の叱咤(しった)に発奮した男が、冷静な1打で連日のヒーローとなった。首位巨人とは依然として3・5ゲーム差だが、本拠地連勝は8に伸びた。
延長12回無死一、二塁。土壇場で荒木に出されたのは条件付きのサインだった。送りバント、ただし、一、三塁が前進してきた場合は打て-。「(先頭の)前田が二塁打を打った時からこういう形になるだろうと思っていた」。プロ15年の経験が頭を冷静にしてくれた。広島大島が初球を投げる寸前、荒木の視界の片隅に一塁岩本、三塁木村の猛ダッシュが映った。瞬時にバスターに移行した。
「ガツンッ」。
鋭い音とともに打球は一塁線を破った。二塁走者が本塁へ滑り込んだ。サヨナラだ。クールに任務を遂行したヒーローにベンチから飛び出した仲間たちが殺到し、歓喜の輪が広がった。
「(一、三塁手が)前に出てきたのが見えていたんで。勝手に体が反応しましたね。まずはランナーを進めることを考えていた」
広島守備陣との駆け引きを制した荒木は冷静に振り返った。前日13日は5回に失策でピンチを招いた直後、落合監督にベンチで叱咤された。「お前らが足を引っ張ってどうすんだ!」。その言葉を発奮材料に7回に決勝打を放った。前夜がハートで打ったヒットなら、この日は頭脳と経験の1打。連夜のお立ち台に、別の“顔”を見せながら登った。
二塁から遊撃へコンバートされた今季は守備のことで頭がいっぱいだった。試合が終わり、自宅やホテルへ戻ると昨年までに感じたことのない疲労感に襲われた。「正直、こんなに疲れるものとは…。こんな疲れ方は今までしたことなかった」。体だけではない。今までとまったく景色の違う9イニングで脳みそも疲れ切っていた。とても、打撃のことまで考える余裕はなかった。
ただ、努力ではい上がってきた男がそれでよしとするはずもない。ある朝、テレビをつけると目からうろこが落ちる情報が飛び込んできた。速読トレーニングで打撃が上達する-。思わず飛びついた。内野手の動きを間接視野に入れながら、速球をとらえたこの日のサヨナラ打が“速読効果”かどうかは定かではないが、ペナントレースの勝負どころで荒木の打撃も上向いてきた。
依然として首位巨人とは3・5ゲーム差。それでも、今季9度目のサヨナラ勝ちで本拠地ナゴヤドームでの連勝は8に伸ばした。「まだ先がある。これからですよ」。幾多の修羅場をくぐってきた荒木の目は冷静にこれからやってくる天王山を見据えていた。【鈴木忠平】
[2010年8月15日10時42分
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