<楽天5-4ソフトバンク>◇29日◇Kスタ宮城

 でっかく息をついた。岩村のサヨナラ打を見届けた楽天星野仙一監督(64)はぬらりと腰を上げ、歓喜の選手を迎えた。「よくボールを押し込んだ。上がりすぎと思ったが」と、苦悩していた背番号1をシンプルに褒めた。直後「バントミスがあったし、左-左でコンコロと打たれていてはダメ」とかぶとの緒を締めたが、その口調は普段より少しだけ、穏やかだった。

 結末までの過程が、終始締まっていた。09年10月から6連敗中だったソフトバンク先発の和田。2回に4安打に犠飛をからめて3点奪い、久々の攻略に成功した。中2日で先発した「ボブ」こと川井が5回3失点の粘投。6回から青山-美馬-有銘としぶとくつないでいった。田淵ヘッドの「無四球が大きい。無四球がこんな試合にした。きっかけにしないと」との指摘はおっしゃるとおり。10回に勝ち越されたが集中は最後まで切れず、10回裏2死無走者から3連打が生まれた。

 この日は「星野監督デー」の冠がついた試合だった。故郷の岡山から遠く離れ、杜(もり)の都で奮闘する将。気の置けないふるさとの仲間がたくさん、足を運んでくれた。「桃太郎が最後、後押ししてくれたのかな」と柔和な顔で締めた。個性豊かな選手たちを引き連れて、どんぶらこ、どんぶらこと長い戦いを乗り越える。きび団子、ならぬソフトバンクを食って元気百倍。鬼たちをこの夜のように勇ましく退治する。掲げるのぼりは日本一だ。【宮下敬至】