<巨人3-5中日>◇1日◇東京ドーム

 異例の動きにスタンドがざわめいた。3点リードの9回裏、中日守護神岩瀬が大村に四球を与えて2死一、二塁となると、落合博満監督(57)は浅尾への交代を告げた。イニング途中の岩瀬交代は、09年以来2年ぶり2度目。坂本に1発を浴びれば同点の場面。勝利のために“非情”にも見える決断を下した。

 浅尾がなんとかしのぎ、試合後落合監督は報道陣に質問される前に口を開いた。「聞きたいことはわかっているよ。オールスター後のことも考えないとな。連戦が続いて、岩瀬ばっかり使えないだろう」。過密日程になる終盤戦を見越しての準備だと説明した。さらに「これからそう(岩瀬、浅尾の順に)なることはありますか」と問われると「それはない」ときっぱり。岩瀬への変わらぬ信頼を強調した。

 今季初の敵地東京ドームでの巨人戦。普段はあえて表に出さない落合監督の気迫が、この日は序盤からほとばしっていた。初回、先発吉見が2死から長野に四球を与えると、今季初めてマウンドに足を運んだ。「カリカリするな。審判とやり合うな」。微妙なコースをボールと判定され、不満そうな態度を見せた大黒柱を諭した。そして、イニング間に自ら西本球審と厳しい口調で話し合った。

 「だって投手がいらついてるんだもん。ジャッジするのは選手じゃない。審判だ。まあ、若いもんが一生懸命やっている。上にしがみついていくためにな」。選手の心理と試合の流れを読む眼力、そして執念の決断で逆転勝利した指揮官は悠然と球場を後にした。【鈴木忠平】