<巨人6-2広島>◇1日◇東京ドーム

 巨人脇谷亮太内野手(29)は、完全には握力が戻っていない右手の力をバットに伝えた。1点リードの8回1死満塁、走者一掃の適時二塁打。右手小指付け根を骨折し、約3カ月ぶりに昇格した1軍の舞台で、いきなり2安打3打点と大暴れした。「あきらめかけたこともあったが、(リハビリを)しっかりやってきて良かった」と感慨深げに振り返った。代打で出場した1打席目は鈴木がけん制死の後に、執念の粘りで10球目を右前打。「なかなか前に飛ばなくて。やべぇなと思っていたら、最後甘く入ってきた」。長く険しかったリハビリを乗り越えたように、根気強さが生んだ一打だった。

 日常生活さえもままならない自分の姿に、心は折れそうだった。右手の握力は60キロから45キロに落ち、箸がしっかり持てずにご飯粒がボロボロ落ちた。「何やってんだろ…」。そんな時、復活への思いを取り戻させてくれたのが、仲間の奮闘する姿だった。早期復帰のために、練習後にも病院で治療とリハビリ。握力を戻そうと、痛みの残る右手で若手に交じり、特打に取り組んだ。「チームに迷惑をかけたので、ただ戻るだけじゃダメなんです。戻った時、チームの戦力になれるような状態でないと」と誓った男に二言はなかった。

 09年のCS第2ステージでMVPを獲得。シリーズ男の復活に、原辰徳監督(53)は「いや、もう、見事ですね。本当、正しく時間を使ってくれてたんだなと。いいスタートを切りましたから、戦力として非常に大きいし、持続してもらいたい」と期待した。9月30日の2軍戦にフル出場。午前7時に仙台から帰京した男が、10時間後、東京ドームのお立ち台に上がった。【久保賢吾】