<中日0-4巨人>◇8日◇ナゴヤドーム
圧巻だった。巨人沢村拓一投手(23)が、今最も勢いのある首位中日をわずか1安打に抑え、プロ初完封をやってのけた。2回、平田に許した左前打のみで、7奪三振。105球で節目の10勝目(11敗)をマークした。巨人新人の1安打完封はなんと65年ぶり。開幕から先発ローテーションを守り続け、防御率は1点台で、新人王も当確と言っていい。3位巨人は貯金を今季最多タイの5とし、4位阪神との差も4ゲームに広げた。
余力を残すかのようなプロ初完封だった。9回、沢村は靴ひもを結び直し小走りでマウンドへ。舞い上がることなく、対峙(たいじ)した。最後の打者、井端を139キロのフォークで二ゴロ。1安打完封で10勝を達成した瞬間、すがすがしい表情に、汗がにじんでいた。「ふぅ~」と息をつき、「9連戦なので、中継ぎの人を休ませられるようにと思ってマウンドに上がりました。僕がしっかりつないで、9連戦を勝っていければ」。考えていたのはチームのことだけだった。
2回2死から平田に左前打されるも、中盤から後半にかけて中日打線を全く寄せつけなかった。150キロを超す直球ではなく、スライダー、フォークで打たせて取った。走者を許したのは2度だけで、得点圏に走者を置いたのは1度。6回2死二塁、ギアチェンジをしたかのように、井端に外角直球を思いきり投げ込んだ。力ない二ゴロ。三塁すら踏ませない圧巻の内容だった。
9月8日から6戦負けなしの4連勝。好調の要因を「分かってたら、ずっとやってると思うので」と、首をかしげるが今の沢村にはマウンド上で考え、感じる力がある。9月27日の横浜戦のこと。下半身が使えず「体重移動がスムーズにできてない」と判断すると、軸足にしっかり体重を乗せることを意識して、試合中にフォームを修正。負けも多く経験し、自分の悪癖、打者心理など、置かれている状況を読めるようになってきた。
固い約束を果たした。恩師の中大・高橋善正監督から「10勝できなかったら、プロにいくな」と言われて入ったプロの世界。「長かったような、短かったような、よく分からないですけどね」と、10勝までの道のりは長かったが、しっかりと実現。「高橋監督がいなかったら、プロに入れてなかったので。高橋監督に(10勝を)伝えたいです」と、恩師への感謝の気持ちを示した。
防御率も再び1点台に突入。1点台でシーズンを終えれば、新人では66年の堀内(巨人)以来の快挙だ。今後の登板は多くても2試合。「勝ち星に左右されず、これからも防御率、四死球を意識してやっていきたい」と力強い。原監督は「まだまだ戦いの半ばであるけれど、いい階段を上っていますね」と評価した。落合監督退任発表後、快進撃を続けていた首位中日を完璧にねじ伏せ、沢村は「首位をたたかないと、上にあがっていけないので」。中日とのゲーム差は4・5。残り8試合、本気で奇跡を信じている。【斎藤庸裕】



