日本ハム栗山英樹監督(50)が、千葉への移動日だった23日、開幕投手に指名した斎藤佑樹投手(23)に、シーズン全試合完投という高い目標を与えた。もともと高校、大学と先発完投型の投手だったこともあり、現実的には厳しいノルマをあえて課し、奮起を促した。89年に11試合連続完投勝利の日本記録を打ち立てた斎藤雅樹(現巨人投手コーチ)の名前も挙げ、理想像を掲げていた。

 2年目で開幕投手を務める斎藤に、栗山監督は“サイトウ”になることを求めた。新千歳空港で取材に応じ「試合を勝たせる投球。投げきらないとダメ。何試合くらい完投?

 全部だよ。自分があきらめたら終わりだし、オレはあきらめない」。最後までマウンドに立って戦う姿勢を、強く求めていく。

 指揮官の脳裏にあるのは、日本中を熱くさせた、あの夏だ。取材者として向き合ってきたアマチュア時代、斎藤がエースとして先発完投する姿を何度も見てきた。楽天田中との世紀の投げ合いとなった06年夏の甲子園決勝も、再試合は救援で登板した田中に対し、計24イニングをひとりで投げ抜いた。

 前日22日のオープン戦最終登板(ソフトバンク戦)は、味方のミスが絡んで5回までに3失点したが、6、7回は3者凡退に仕留めた。「一歩進んでくれている。何か違ったね」。終盤に入っても崩れなかったことに、変貌を感じつつある。ハンカチ王子と呼ばれた当時の“サイトウ”の姿に、少しだけ近づいていた。

 先発完投型というのは、斎藤本人も自覚している。「力んでしまうと制球ミスが多い。力が抜けてくると、気持ちが楽になりながら投げられるんです」。気合が入りすぎる序盤よりも、少し疲れが出てきた中盤から終盤の方が、自分の投球の良さが出ると自己分析する。「その分、スタミナはある程度自信は持っています。完投したいです」。指揮官の期待に、応えるつもりでいる。

 栗山監督には、塗り替えてほしい記録がある。斎藤雅樹の11試合連続完投勝利という89年の偉業だ。「あの最後の打者、オレなんだよね」。実は11試合目に最後のアウトを取られたのが、当時ヤクルトの栗山監督だった。ひとりでマウンドを守った6年前のサイトウを思い出し、ゆくゆくは日本記録をつくったサイトウ超えへ。30日に迫った西武との開幕戦(札幌ドーム)で快投を演じれば、最高のスタートになる。【本間翼】