<ヤクルト1-0広島>◇15日◇松山

 ヤクルトの「ジャイアン」赤川克紀投手(21)が、7回4安打無失点で今季初勝利を挙げた。直球、ツーシームを主体に、再三のピンチを粘りの投球で脱し、広島野村に投げ勝った。昨オフはオリオールズ和田と自主トレを行い、初の動作解析で理想のフォームを追い求めた。チームは3回に田中の右前適時打で奪った1点を押本、バーネットとつなぐリレーで守り切り、貯金を2とした。

 ベンチからにやけ顔で出てきた赤川は、松山のファンに手を振ってあいさつを決めた。並んで立った宮本と握手を交わすと、すぐに、チームリーダーから右頬に軽~く、愛のビンタを受けた。それでも笑った。痛くなんかない。「ピンチは多かったけど、粘り強く投げられた」と、目尻は下がりっぱなしだった。

 1-0のしびれる展開で、持ち味を存分に発揮した。6回1死一、二塁では、内角への139キロ直球で会沢を三塁ゴロ併殺打に打ち取った。7回1死満塁は、遊飛、遊ゴロで無失点で切り抜ける。ナチュラルにカット気味に動く直球、ツーシームを丹念に低めに集めた。直球は130キロ台でも、球速以上に速く見せる。4四死球を出し三振は0。それでも失点は0だった。

 3試合目での今季初勝利に、小川監督は「よく踏ん張ってくれた」と賛辞を贈った。昨オフは、オリオールズ和田と自主トレを行った。鹿屋体大(鹿児島)では、理想のフォームを追い求め、初めて動作解析に取り組んだ。「高校(宮崎商)で情報処理をやっていたんで、一応…」とパソコンを駆使。腰の回転、腕の位置、膝の角度…。今でもCD-ROMを見返しては、フォームを微調整。「ジャイアン」は、「できすぎ君」に変身していた。

 昨季までは先輩捕手のサイン通り投げ続けたが、配球にも自分の意見を加えた。捕手の中村は、プロ入り同期でともに高卒4年目。長い2軍生活で、苦楽を共にしてきた仲だ。サインには遠慮なく首を振り、2人でツーシーム主体の攻めを選択。中村は「2人でバッテリーを組んで勝つことが、入団した時からの夢だった」とかみしめた。

 「ジャイアン」の好投で、貯金を2に伸ばした。ヒーローインタビューを終えると「今日は勝ったんで、電話します」とバスに乗り込んだ。米国にいる和田へ、感謝の国際電話を鳴らすつもりだ。【前田祐輔】

 ◆できすぎ君

 本名は出木杉英才(できすぎ・ひでとし)。ドラえもんに登場する秀才キャラクター。のび太らのクラスメートで、学業優秀でスポーツ万能。空き地ではジャイアン、スネ夫らと野球などで遊ぶシーンも。ひそかにしずかちゃんに好意を持っている。