<巨人2-3日本ハム>◇28日◇東京ドーム

 4番降格のピンチを豪快に吹き飛ばした。日本ハムの中田翔内野手(23)が、巨人戦で決勝2ランを含む3安打で勝利に導いた。第1打席で21打席ぶりの安打を放つと、7回の第3打席では67打席ぶりの本塁打を左中間にたたき込んだ。前日までの苦い思いを払拭(ふっしょく)する今季2度目の猛打賞だった。この日は他球場でもアーチが飛び交い、今季初めて全6試合で本塁打を記録。合計10本で今季初めて1日で2ケタを超えた。

 迷いを振り切る一打が左中間席へ吸い込まれていった。7回、ホールトンの2球目だった。外のスライダーに、中田はバットをぴたりと合わせた。「しっかりためて、うまく反応できた。手応えは完璧でした」。ハイタッチの列に迎えられ、23歳の顔がほころんだ。

 2回の第1打席には21打席ぶりの安打を放ち、果敢なヘッドスライディングで二盗に成功。今季2個目の盗塁が先制点につながった。9回の第4打席でも左前打。4番降格の危機から一転、今季2度目の猛打賞だ。「ずっと4番を打たせてもらっている中で、まったくチームに貢献できなかったので…」。チームを4試合ぶりの勝利に導き、万感の思いに浸った。

 もともと飽き性だから、打撃フォームが一定しない。さらに結果を残せず、悪循環に陥っていた。「自分のスイングができなかったし、とらえても力のない打球になっていて、それが一番の悩みだった」。25日中日戦でガニ股打法からすり足に変え、前日27日には左足を上げることで、より力強い打球を飛ばそうと試みた。

 この日の練習前、敵将の原監督に肩をもまれながら「もう少し、ゆったりとしたフォームでやってみたらどうだ?」とアドバイスされた。打撃練習中には野球解説者の立浪和義氏からも助言をもらい、フリー打撃では柵越えを連発。「僕みたいな選手にあんなふうに声をかけてくれて、本当にありがたい」。打率1割台で、規定打席に達している打者では12球団最下位。もがく若き4番を、歴代の強打者たちがチームの垣根を越えて励ました。

 「正直、逃げ場もないし、自分で何とかしないといけないレベル。打っていないのに試合に出てるのがつらい。去年までの自分やったら『何で、あの人打てへんのに試合に出てるんや』って思うはず」。中田自身、1軍と2軍を行ったり来たりしていた経験があるからこそ、申し訳ない思いで胸が張り裂けそうになっていた。札幌の自宅に帰れば、今年1月に結婚したばかりの新妻が心配そうな顔で待っている。「顔が暗いよ、野球が楽しくなさそうだよ」。野球を知らない妻に言われるたびに、自分を奮い立たせてきた。

 「この試合で久々にフルスイング出来て気持ちよかった。今日のようにフルスイングしていけば、自信もついてくる。これからは、打撃フォームを1つに絞ってやっていきたい」。開幕から47試合目で、ようやく見えてきた“自分のスイング”。自信を確信へと変えるため、辛抱強く、現在の打撃フォームを追求していく。【中島宙恵】

 ◆中田の打撃フォーム試行錯誤

 今年2月のキャンプイン前は、大きく足を開いて腰を沈める「ガニ股打法」を継続する意向を示していたが、名護キャンプでは、その体勢からの「すり足打法」に挑戦。4月14日には、立浪氏の助言もあり、下半身はどっしり構え、バットを立てずグリップ付近は脱力するフォームに変更。08年の入団当初は背中を大きくそらしてトップの位置を決め、左足を上げるフォーム。昨年は両足に体重を均等に乗せ、重心を落としたすり足でスタートしたが、途中からノーステップ打法に切り替えた。