<中日4-2広島>◇7日◇浜松

 守道竜がドタバタ采配で3連勝を飾り、貯金を最多の17に増やした。1点リードの6回、必勝継投を巡って高木守道監督(71)と権藤博投手コーチ(73)がとんだ思い込み。田島がセットアッパーに定着してから初めて6回から、しかも2イニング投げた。このハプニングが奏功して眼下の敵広島に勝利。演出したのは「絶対勝たなイカン」監督の執念だった。

 「ピッチャー田島!」。1点リードの6回。高木監督から選手交代を聞いた杉永球審がアナウンス室に叫んだ。これを聞いた権藤投手コーチがびっくり仰天、慌てて両手でバツをつくって審判室に駆け込んだ。権藤コーチが2番手に告げていたのは武藤で、マウンドで投球練習を始めていた。投手起用を巡り何度かぶつかってきた高木監督と権藤コーチ。またまた大げんかボッ発か、と思われた。

 高木監督が苦笑いで明かした。「ブルペンの画面を見たら武藤が田島に見えたんだよ。似とるでしょ?

 早いけどいくんだと思った。権藤さんにも田島だねと確認したよ。そしたらうんとうなづいたように見えたんだ」。すると今度は権藤コーチが頭をかいた。「私は武藤のつもりだったけど、監督の田島にハイと言ってしまった。私のミスです。でも田島で正解だったんじゃない」。何と監督、コーチのダブルでの「思い込み」。これが前代未聞の珍事を生んだ。

 結局、インターバル中に権藤コーチも田島に任せる腹を決め、武藤は複雑な顔で“降板”。田島もセットアッパー定着後初めて6回から、しかも2イニングを投げ、0封で逃げ切った。

 「前田健相手にリードしとるんだから絶対勝たなイカンですよ」。田島の起用といい、実際ドタバタを演出したのは監督の執念か。首位巨人追撃に負けられない。1点リードの8回は井端にスクイズを命じてリードを広げた。「もうスクイズはやりません。セコイ野球はやりません。でもこの勝ちは大きい」とにっこり。采配“ズバリ”の3連勝で眼下の3位を下し、貯金は最多の17。結局すべてがうまくいって、ご満悦の浜松ナイトだった。【松井清員】