巨人のドラフト1位、東海大・菅野智之投手(23=東海大相模)が「ゴジラの魂」を継承した。8日、川崎市のジャイアンツ寮に入寮し、201号室、通称「松井部屋」を同期入団の6人と見学した。昨年末に現役引退を表明した松井秀喜氏(38)の努力の跡を体感し、プロ野球選手生活をスタートさせた菅野は、心技体を充実させ、さらなる高みを目指す。

 ジャイアンツ寮の201号室。菅野はボロボロにすり切れた畳を手のひらでなでた。伝わってきたのは、先人の努力する姿だった。次期監督候補とされる松井秀喜氏が、現役時代に素振りを繰り返した、通称「松井部屋」。独特の雰囲気に包み込まれた。

 菅野

 あれだけすごい選手になるためには想像を絶する努力があったと思う。あれだけの大打者でも、ものすごい努力をしてるので、自分たちはもっともっと頑張らないといけないって思いました。

 建物の老朽化を受けて3月中旬まで改修工事中のジャイアンツ寮の中で、保存が検討されているだけのことはある。近年、多くの新人たちがその影響を受けてきた。坂本や長野もそう。松井氏の残した魂が、巨人の若手のやる気に火をつけてきた。菅野も例外ではなかった。敏感な感性で、その魂を受け取った。

 心は「松井部屋」で奮い立たせ、技はヤンキース黒田を見習う。この日、持ち込んだ銀色のスーツケースの中に黒田の著書「決めて断つ」をしのばせた。

 菅野

 昨年、テレビでメジャーの試合をたくさん見させてもらったけど、その本の中の言葉で「投球の1割もストレートを投げない。ほとんどの球を動かしてピッチングするようになった。日本にいる時からもっと練習しておけばよかった」というのを読んで、僕もちょっと動く球を練習しだした。そういう意味もこめて(この本は)気に入っています。

 普段、野球の本はよく読む。だが、読み終わると、いい本だと思ったものは後輩たちにプレゼントしていた。唯一手元に残してあるのが、この本だった。

 心技体。最後の1つ、1年間戦う体作りは、寮の環境が助けてくれそうだ。この日、菅野を歓喜させたのは、寮に到着したすぐ後に、食堂で出されたスパゲティ・カルボナーラだった。

 菅野

 おいしかった。まずは食事がおいしいというのが一番。食事、睡眠、入浴、僕はその3つが重要だと考えているんですが、ここには間違いなくそろっている。地下にちょっとした練習場があったり、寮内でなんでもできる。活用できるようにしていきたい。

 1年間の浪人を経て、巨人の選手としての門出の日を迎えた菅野。受け継いだ魂を胸に刻み、勝負の世界へ飛び込む。【竹内智信】

 ◆松井部屋

 ジャイアンツ寮201号室の通称。松井氏が寮生活を送った93~96年半ば、住んでいる部屋とは別に深夜の素振りを繰り返した2階の「素振り部屋」のことで、大鏡付き。ふすまを外して隣の202号室とつながっており、広さは1室あたり約10畳。擦り切れた畳は見学に来る新人選手を毎年驚かせ、坂本は「成功した人は努力している」、長野は「すごい。僕もここでいっぱい練習して松井さんのようになりたい」と刺激を受けた。