<西武7-2ロッテ>◇5日◇西武ドーム

 西武菊池雄星投手(22)が、6回を5安打1失点に抑えて9勝目を挙げた。1回に先制点を献上するなど毎回走者を背負う苦しい投球だったが、試合中に投球フォームを微調整。防御率はリーグトップの楽天田中には届かなかったが、首位ロッテ相手に粘りの投球が光った。チームは4番浅村の3試合連発となる2ランなどで7点を奪い、3連勝で3位に浮上した。

 自身初の2ケタ勝利にあと1つに迫った余韻はなかった。菊池の口から出た言葉は、勝ち投手とは思えないほどの反省の弁だった。「自分から崩れてしまった。2度とこういうピッチングをしないように。今日は野手のみなさんと銀さん(炭谷)のリードに助けてもらった」。スタンドの熱気とは対照的に、声のトーンは低かった。

 最悪な状態の中、工夫したのはイニング間のキャッチボールだった。投球フォームを頭に描きながら、1球1球フォームを修正。「ストライクが入れば試合になる。ストライクのとれる道を探した」。やや左肘を下げる制球力重視のフォームに変えた。6回からは無死でもセットポジションで投球。工夫を重ね、最少失点に抑えた。

 修正能力の高さとともに、チーム屈指の馬力が尻上がりの投球を支える。渡辺監督が「馬のケツみたい」とうなる下半身を、ウエートトレーニングで作り上げた。シーズン中でも、フルスクワット(バーベルを持ってしゃがんだ状態から立ち上がる)は、西武投手陣トップクラスの150~200キロの重量を上げる。トレーニングと量と質の高さが、終盤のギアチェンジを可能にしている。

 自己評価は極端に低かったが、ミットから感じるボールの重量感を捕手の炭谷が証言した。「悪い、悪いと言うけど、ボールに力はあった。打たれたヒットは初回を除けば2本でしたから」。菊池が振り返ったように、フォームはバラバラでも、それを上回るボールの威力と勝負どころでのギアチェンジが驚異の粘りにつながった。

 この日の試合前、渡辺監督は菊池の完成度を「60%」と評価した。「(求めるのは)150キロ連発。相手がお手上げとなるような、牛耳るような投球を、ね。3点取れば、相手が戦意を喪失するような投手に」。リーグ2位の防御率1・40をマークしても、能力の高さを知るから、求める頂きも高くなるのだろう。「次は自分の力で勝てるように」。菊池自身も、それを自覚している。【久保賢吾】<データセンター>

 ▶菊池が6回1失点で9勝目を挙げた。今季の菊池は331打数62安打で被打率1割8分7厘。イニング別の被打率を見ると、1〜3回が2割5分2厘、4〜6回が1割3分8厘、7〜9回が1割2分と、序盤がやや悪いだけで、4回以降はほぼ完璧に抑えている。パ・リーグ規定投球回以上で被打率の上位5傑は(1)菊

 池(西).187(2)野

 上(西).204(3)木佐貫(日).221(4)金

 子(オ).222(5)田

 中(楽).229

 勝利、防御率、勝率では田中に負けている菊池だが、被打率は1位。セ・リーグにも規定投球回以上で被打率1割台はおらず、菊池が今季最も打ちにくい投手になっている。