<阪神8-1中日>◇30日◇甲子園

 10個目のメッセンジャー白だ。長身右腕ランディ・メッセンジャー投手(31)が虎助っ人ではキーオ以来となる3年連続2桁の10勝目を挙げた。完封ペースが9回に乱れて降板までしちゃったけど、序盤は必死に粘って援護を待ったんじゃー。暗黒時代のエース、キーオと違って、こちらは逆転優勝という大きな目標がリアルにある。もっともっと勝つんじゃー。

 1週間前の誓いがある。メッセンジャーはナインとともにグラスを傾けた。ビールなどで盛り上がる周囲をよそにノンアルコールドリンクを貫く。東京遠征中の23日は、選手とスタッフが人気スポット恵比寿の焼き肉店に集結した。後半戦開幕前の決起集会。翌24日ヤクルト戦で先発予定のメッセンジャーも参加した。午後11時過ぎまで行われたが途中で帰らず、最後まで仲間と盛り上がる。結束を強め、体調管理に努め、好発進につなげた。

 「頭の中をリフレッシュしてね、後半戦を新しいスタートだと思ってやろうと思っているんだよ」

 チームの窮地を救う力投だった。9回こそ1点を失って途中降板したが、今季初対決の中日を8回まで無失点に抑えた結果が何より殊勲だ。来日最多タイの146球で耐え切った。前日29日に左肘違和感の榎田が抹消され、この日は不動の1番西岡が戦線離脱。4連敗中と追い打ちをかける最悪の流れを断った。完封勝利こそ逃したが連敗ストッパーの役割を果たした。

 「あそこ(9回)は絶対に点をやりたくなかったんだ。不運にも点を与えてしまったからね…。全体的にはいい投球だったと思うけど。ゴロが抜けていってしまっては仕方ない」

 勝利まで残りアウト1つで降板したが堂々と今季10勝目を挙げた。阪神外国人ではキーオ以来の3年連続2桁勝利だ。

 「DeNA3連戦でチームが苦しんでいるのを見るのがつらかった。何とかしたかったんだよ。長い回を投げて、チームが勝つチャンスを与える投球をね。良かったよ」

 セットポジションも工夫した。普段のように前かがみになってから起きる動きではなく、ピシッと立ったまま始動する動作も取り入れた。1回先頭大島に四球を与えて1死二塁のピンチを招いた。それでも森野を低めフォークで、和田を高め直球で空を切らせた。悪いムードを食い止めるべく、仁王立ちした。

 「チームに貢献するため日本に来ていると言っても、過言ではない。チームメートが点を取ってくれるからね。勝てるのもみんなに感謝だよ」

 夏場に調子を上げ、自身4連勝を飾った。ビールがおいしい季節だが、優良助っ人は違う。普段から登板後くらいしかアルコール類を口にしないという。逆転Vに不可欠な長身右腕には夢がある。優勝のビールかけだ。最高の美酒に酔うまで、ストイックにわが道を突き進む。【酒井俊作】