<ヤクルト9-12DeNA>◇31日◇神宮

 攻めた姿が大逆転を呼び込んだ。DeNAが4回までの最大7点差をひっくり返しての劇的勝利。大喜びの中畑清監督(59)は、打線を大絶賛しながら、バレンティンに逃げずに勝負を挑んだ投手陣も称賛。「すごいよ」連発の勝利の裏には、少年からの手紙があった。

 言葉が出てこないくらいの喜びようだった。中畑監督は満面の笑みで「すごいよな。感動しちゃった。先発の不安をみんなでさ、振り?

 何て言うの?

 そう、振り払ってくれた。もう(言葉が)出てこないね」とまくしたて、うれしさを爆発させた。

 バレンティンの本塁打日本記録に注目が集まる今カード。前日30日の試合前には、「俺の本音は120%勝負だけどな」と明かしていた。しかし投手陣は攻めきれず、52号を浴びてチームも大敗。歯がゆさから「戦う魂がマウンドにない」と断じた。しかし、この日の投手陣には求めた姿を感じ取った。「今日も全部勝負だよ。(先発)井納は四球になったけど、攻めていたから引っ張った。大田もそう。マウンドでの攻める姿に報いてやろうという攻撃陣の意地もあったんじゃないかな」と、逆転の要因を分析した。

 中畑監督にとっても、“勝負の采配”が問われていた。球宴休み中、少年から1通の手紙が届いた。「ああいう野球は中畑監督らしくありません。残念でした」。3連勝を飾った7月15日からのヤクルト3連戦で、得点機にバレンティンを敬遠気味に歩かせた采配についてだった。この指摘にこう言った。「逆にうれしかったね。俺の野球への姿勢を分かってくれているな、ってね。でもチームとして勝つことを考えた時、監督として、あいつに打たれない、打たせない決断もしないといけないんだよ」。

 この試合、バレンティンを得点圏で迎えたのは3回、4回の2度。勝つことだけを優先すれば、“打たせない”ために勝負を避ける判断もあった。それでも勝負を指示したのは、大量リードを許す中、受け身となることがベンチの士気を下げかねないと考えたからだった。

 「チームの気持ちが1つになっていないと、こんな芸当はできない。最高のドラマだよ」。攻め続ける姿が、あきらめない結果につながった。少年から言われた“らしい”野球を迷わずに貫いたからこその、逆転劇だった。【佐竹実】

 ▼DeNAが5月10日巨人戦、8月20日阪神戦に次いで今季3度目の7点差逆転勝ち。過去2度は本拠地の横浜スタジアムで、敵地で7点差以上の逆転勝ちは82年10月11日、広島市民球場での広島戦(0-7→11-10)以来、チーム31年ぶりだ。70年以降、7点差以上の逆転勝ちをシーズン2度は03年ダイエーが5月14日近鉄戦(8点差)と9月4日日本ハム戦(7点差)で記録しているが、シーズン3度、月間2度は今年のDeNAしかない。