完全な「敵陣」から船出だ。小久保裕紀監督(42)率いる新生・侍ジャパンは今日8日から台湾代表と強化試合3連戦を迎える。新荘野球場での前日練習。指揮官は外野の芝生に円陣を組み、訓示した。「日本の野球環境がいかに恵まれているか。時間通りに事は進まないが、それでプレーに影響が出るようでは国際大会は戦えない。ストレスがかかるが、自分で消化するように」。いわゆるアウェーの洗礼。それを打破するたくましさを磨くにはぴったりな、舞台装置が初陣に備わった。

 まず熱狂的な台湾の応援だ。頑張れを意味する「加油」の大歓声に乗って勢いづくのは有名で、新荘野球場のチケットは完売に近く、1万2300人収容の客席はほぼ相手ファンで埋まりそう。「完全アウェーの応援。声の連係は難しい。ジェスチャーは大きめに」と指揮官はナインに基本的な指示を確認した。

 足元に目を向けた菊池は「イレギュラーする」とグラウンド状態の違いを感じ、空を見上げた中田は「打球がちょうどライトに入る」。さらに日本気象協会も分布予測するPM2・5が大陸から飛散した影響なのか空はかすみ、平田は「ぜんそく持ちなので厳しいですね」と苦い顔。ライトの照度も異なり、投手陣からは捕手のサインが見づらいという声が上がった。

 早朝から空路で台湾入りし、休む間もなく全員で公式会見に出席。練習開始は15分遅れ、その後はパーティーとドタバタな1日だった。そんな野球に集中しづらい何重苦もの環境こそ、経験の浅い新生ジャパンに必要な“栄養剤”。今年のWBC2次ラウンドの対決では緊迫感あふれる展開の末、日本が1点差で下した試合は台湾で語り草となり、今回も注目度が高い。小久保監督は「そうなると、勝つということにこだわりたい」ときっぱり。逆境からたくましい侍ジャパンを育てる闘いが始まる。【押谷謙爾】