<東京6大学野球:明大6-0慶大>◇第6週初日◇14日◇神宮

 今秋ドラフト1位候補の対決は明大・野村祐輔投手(4年=広陵)に軍配が上がった。野村は慶大の4番伊藤隼太外野手(4年=中京大中京)を3打数無安打1三振に抑え、3安打7三振で2試合連続完封。今季4勝1敗で通算23勝(9敗)となり、大先輩である楽天星野仙一監督(64)に並んだ。法大は1回に8点を奪い11-1と早大に大勝した。

 試合を締める119球目、野村は直球を伊藤のふところ目がけた。自己最速タイの149キロ。「最後は力勝負した。打たれると明日に影響する」と、学生NO・1打者にショックを与える投球を意識した。バットは真っ二つに折れ、力ない打球が野村の足元に転がった。難なく処理すると、涼しげに整列へ向かった。

 バッテリーで伊藤封じにかかった。「打者を観察しながら粘り強くやってくれた」と善波達也監督(48)が語ったように、野村と捕手の川辺は細心の注意を払った。集約されたのは1打席目。カウント3ボール1ストライクから歩かせたが、全球種を投じて様子を見た。伊藤が振ったのは2球目のチェンジアップ。打席で投手寄りに立っていることも分かった。2人は「変化球を狙っている」と察知し、2打席目は直球3つで二ゴロ。3打席目は直球と変化球を交え「魔球です(笑い)」(野村)という137キロのチェンジアップで三振を奪った。

 1打席目に3本塁打している伊藤の解析も十分だった。今季の打席をDVDでチェック。「本塁打はすべて内寄りの甘い球。ボールでもいい」(川辺)という内角ギリギリの要求に応える。ひとつ間違えれば1発の危険を秘めた中、精密機械のようにコントロールした。

 同じ岡山・倉敷市出身の「燃える男」楽天星野監督に並ぶ、通算23勝目。23という数字は野村が1年時につけた背番号だ。善波監督は「御大(故島岡吉郎監督)が期待する若手につけていた番号なんです。それをまねて」と説明する。期待に違わず、今はエースナンバー11。通算280奪三振で、今季中の大台300到達も見えた。連勝なら優勝だった相手の勢いを止め、逆転優勝への手はずも整えた。それでも「2つ勝たないと勝ったうちに入らない」とクールな表情だった。【清水智彦】