<北海道6大学野球:東農大北海道1-0旭川大>◇第5節最終日◇23日◇苫小牧緑ケ丘

 王者が執念でよみがえった。東農大北海道が旭川大を下し、3季ぶり春秋通算21度目の優勝を飾った。0-0で迎えた9回1死三塁、池沢佑介捕手(2年=神奈川・武相)が右翼へ犠飛を放って勝ち越し。今夏の100本ノックや、春に導入した100メートルテンポ走などの成果を勝負どころで発揮した。東農大北海道は、10月6日から開催される王座決定戦(網走呼人)で、明治神宮大会出場をかけて札幌6大学リーグの覇者・道都大と対戦する。

 最後の打者を三振に切って取ると、陶久亮太投手(4年=帯広農)が両手を大きく広げ、そのまま池沢捕手と強く抱き合った。ベンチ、グラウンドにいた全員がマウンドまでダッシュ。2人を歓喜の輪で包んだ。「選手がよく頑張ってくれました。よく練習についてきてくれました。初優勝した時と同じくらいうれしい」。樋越勉監督(55)が、目頭を押さえた後も止まらない涙を、サングラスで隠した。

 前日は延長12回を戦い、2-2の引き分けに終わった。勝てば優勝のかかったこの日も、8回まで両校とも無得点。勝敗を分けたのは自信だった。「『次は(安打を)狙っていきます』と監督に言ってから打席に入った」と池沢。1死三塁の場面で、右翼の深い位置にきっちり犠飛を放ち、勝負を決めた。

 裏付けは練習量だった。今春から体幹トレーニングと新しいランニング練習を導入。特にランニングメニューの1つ100メートルのテンポ走は、最多で100メートル走の10往復を3回行った。また、秋のリーグ戦を目前に控えた8月中旬、東都大学リーグの名門・亜細亜大学と対戦。練習試合の3試合目で0-6の大敗を喫した時には、会場の釧路から3時間かけて地元の網走に戻ると、すぐに全員が100本ノックを行った。「倒れるかと思うほどだった。でもそれで負けない自信がついた」と主将の山城明久左翼手(3年=沖縄水産)は振り返る。

 次は王座決定戦で、札幌6大学リーグで優勝した道都大と戦う。プロ注目の右腕・佐藤峻一(4年=北見柏陽)との対戦も予想されるが、学生日本代表経験のある池沢は「うちの投手も実力は変わりません。(佐藤を)打つ自信もあります」と胸を張る。山城も「地元ですし、2連勝します」。自信を「優勝」という形で示した東農大北海道が、もう1つ上の頂をうかがう。