2020年の東京五輪が決まり、メディアもさまざまな競技で「未来のメダリスト」を捜そうと躍起になっている。ボクシング界も同様で、中でも注目度が高いのが元東洋太平洋フェザー級王者松本好二氏(大橋ジムトレーナー)の長男圭佑(15=みなと総合)だ。

 15歳以下の全国大会で5連覇の実績を残し、今春に高校に進学。4月19日には早くも関東大会の神奈川県予選に出場し、2回TKO勝ちの華々しいデビューを飾った。ライトフライ級ながら170センチを超える長身から繰り出すジャブは威力十分で、上下に打ち分けながら攻めるスタイルは完成度が高い。

 「圭佑」という名前には、川嶋勝重、八重樫東らを育てた松本氏の強い思いが込められていている。現役時代、東洋王座を獲得も、世界王座は3度挑戦も届かなかった。その中で、師匠である米倉会長から飛躍のためと勧められたのが改名で、その時の名前が「圭佑」だった。

 松本氏は当時を振り返り「名前を変えるのはどうしても嫌で、『弘司』を『好二』にすることで折れた。でも、鬼塚は勝也に変えて世界王者になった。自分も変えていれば世界を取れていたのかなと思う時もある」と話す。だからこそ「息子が生まれたら圭佑にしようと決めていた」。ボクシングは強制させなかったが、小学4年の時に自然と同じ道を選んだ。米倉会長に報告した際には「きっと世界王者になるな」と言われたという。

 ロンドン五輪で村田諒太が48年ぶりに金メダルを獲得し、話題を呼んだ。圭佑も村田に憧れて五輪を目指す1人。緊張のデビュー戦を終えると「高校3年間ボクシングに集中して、五輪のリングに立ってみたい」と目を輝かせながら夢を語った。まだ5年ある。圭佑だけでなく、多くの若いボクサーが、その舞台を目指している。厳しい戦いの中から、次のスターが生まれることを期待したい。【奥山将志】