名門再建が若き元世界王者に託された。今月21日、協栄ジムの金平桂一郎会長(49)が、OBの元WBA世界フライ級王者坂田健史氏(35)の代表就任を発表した。近年の低迷が理由で「リングに立ったことのある経験者が現場の陣頭指揮を執るべきだと思った。私は一歩引き、ジム運営は坂田に一任する」と新体制の意図を説明した。

 海老原博幸、西城正三、具志堅用高、上原康恒、渡嘉敷勝男、鬼塚勝也、勇利アルバチャコフ、オルズベック・ナザロフ、佐藤修、亀田興毅、坂田、佐藤洋太と国内最多の12人の世界王者を輩出も、佐藤が王座陥落した13年5月以降、所属選手の世界挑戦は1度もない。全盛期に400人以上いたというジム会員も半減し、現在は日本ランカーも1人という厳しい状況だ。

 坂田氏が立て直しのビジョンとして強調したのが「スター選手を1人作ること」だった。98年に自身が入門した当時も、ジムに日本王者、世界王者は不在。それでも、佐藤修など多くの若い選手が世界王者を夢見て汗を流していた。「当時のような活気を取り戻したい。強い選手が出れば、人は集まるようになる」。近年は行っていなかったアマ選手の勧誘も行っていく意向で「自分自身が動いて、パイプを作っていくことも大切になってくる」と力を込めた。

 ジム会長を務めるのに必要なクラブオーナーライセンスの取得には約3年かかるため、当面は金平会長のサポートを受けながらの運営になる。それでも「ゆくゆくは会長という気持ちを持って取り組んでいく」と責任感を口にした。就任に合わせ、ジムのホームページをリニューアルした。「小さなことからですね」と坂田氏。東京・稲城市市議を務める35歳の手腕に注目だ。【奥山将志】