今年もG1クライマックスの夏が来た。新日本プロレスが毎年開催する夏の最強戦士決定戦。18日、札幌・北海きたえーるで行われた開幕戦は、IWGPヘビー級王者オカダ・カズチカ(28)、前年優勝者棚橋弘至(39)が相次いで敗れる大波乱の幕開けとなった。

 今年で26回目を迎えるG1は、夏だからというだけでなく、選手たちの思いも熱い。リオデジャネイロ五輪に出場するバスケットボール女子日本代表の吉田亜沙美主将が「五輪に出れば人生が変わる」と話したが、プロレスラーにとってG1は、まさに人生が変わる大会だ。

 古くは、G1最多5度の優勝を誇る蝶野正洋が、G1によって闘魂三銃士で最も目立たない存在から、トップスターに上り詰めた。最近では、オカダが米武者修行から凱旋(がいせん)1年目の12年に、G1初出場で初優勝。その後、一気に新日本の頂点に立った。また、「みんなのこけし」こと本間朋晃は、G1初出場の14年に、全敗したのに大ブレーク。昨年は、米国から参戦したマイケル・エルガンが一躍人気者になった。

 多くのレスラーが、G1で成功をつかむのに、優勝してもそれを生かし切れなかったレスラーもいる。今年、大ブレークした内藤哲也(34)だ。13年のG1に優勝。14年1月の東京ドーム大会で、当時IWGPヘビー級王者だったオカダへの挑戦権を手に入れた。しかし、東京ドーム大会は、ファン投票で、IWGPインターコンチネンタル選手権の中邑真輔-棚橋戦に奪われた。肝心の試合でも、オカダを相手に実力を発揮できなかった。

 内藤は「G1はプロレス界最大のジャンプ台。だけど、13年はそれを生かし切れず、踏み台を踏み外して一気に転落した。だけど今のオレだったら、100%以上生かし切る自信がある。優勝後の舞台がとても楽しみだよ」と大会前に話していた。ロスインゴベルナブレス(制御不能)というユニットをメキシコから持ち帰り、日本支部をつくってから、1年足らずでトップスターの座をつかみ取った。6月、1度は奪ったIWGPヘビー級王座こそオカダに奪い返されたが、自信満々だ。

 内藤以外にも、開幕戦でオカダを破った丸藤、棚橋に勝ったSANADAと、20人の男たちが、それぞれの野望を胸にG1に望む。12年の優勝決定戦前に、桜庭とともに新日本参戦を宣言した柴田勝頼も、団体内での存在感が増し、優勝へ機が熟した感がある。オカダに勝てず、その軍門に下りCHAOS入りした後藤洋央紀も不気味な存在だ。8月14日、G1のトロフィーを抱くのは誰か。五輪同様、こちらも目が離せない。【桝田朗】