最後の最後まで「大将」はかっこよかった。7月31日に膵臓(すいぞう)がんのため61歳の若さで亡くなった、第58代横綱千代の富士の前九重親方。遺影は両腕を胸の下で交差させ、優しいほほ笑みの中でも鋭い眼光でこちらを見ていた。09年に国技館で撮影されたもの。出棺の際には全国からファンが駆けつけ、多くの人々に愛されながら天国へと旅立った。
6日の通夜、7日の告別式には多くの著名人も駆けつけた。その中には「若大将」と呼ばれたプロ野球巨人の原辰徳前監督の姿も。現役引退後も故人を「横綱」と呼んでいた原前監督は、わずか1カ月ほど前に会ったばかりだったという。驚きと悲しみの中、生前のエピソードをこう明かした。
「非常に強気で、相撲においては立ち合いの、すべてを受け止めてそして豪快に投げるという。ゴルフにおいても、やや私のほうが上手ではあったんですけど、決して私のことを『上手』と言わずに、非常に強気な弁の中で小さなボールを追いかけたという、そういう思い出があります」
「ウルフ」の愛称で無敵の強さを誇った「小さな大横綱」。それは土俵の外でも、引退後でも変わらなかった。記者も取材の際には鋭い眼光でにらまれ、何かにつけて怒られた記憶しかない。だが、緊張しながらも、故人から聞きたい話はまだまだたくさんあった。名古屋場所では見送りとなった白鵬の通算1000勝、そして更新されるであろう最多勝利記録。今回の訃報で、故人の偉大さをあらためて知った。【桑原亮】


