春日山部屋が一時消滅することになった。日本相撲協会による師匠の辞任勧告を19日に春日山親方(元前頭浜錦)が承諾。力士たちは嘆願書を提出したが認められず、その日のうちに部屋の力士23人の半数以上が引退届を提出した。あまりのドタバタ劇に、記者も驚くばかりだった。

 春日山部屋を取材で訪れたのは、ちょうど1年前。先代に借りていた部屋から新しい部屋へ引っ越しする時だった。笑顔で荷物を運び込む様子を写真に収めたのも、記憶に新しい。部屋の隣にある飲食店には力士たちの写真が貼られて歓迎ムードだったが、こういう形で別れることになり、店員の女性も「寂しいね」と残念そうだった。生まれも育ちも川崎市という60代男性は「川崎に相撲部屋があるのが当たり前だった。早く戻ってきてほしい」と、地元での再興を願っていた。

 現役を続行するある力士は「(例えば)会社でもそうだと思いますけど、社長が替わったから会社やめますとか、部署が変わったからやめますとか、普通はないじゃないですか。我慢していればいいことがあると思って、やるしかない」と前向きだった。実は記者も、11月から人事異動で相撲担当を離れる。そのことを明かすと「頑張って下さい!」とエールをくれた。相撲担当は2年弱と短かったが、学んだことは多い。春日山部屋の力士たちの明るい未来を願うとともに、彼らに負けじと食らい付きたい、と切に思う。【桑原亮】