寄る年波と、どう向き合うか-。アスリートにとって加齢は、対戦相手以上にやっかいなものだ。忍び寄る衰え。その現実を素直に受け止め、足元を見詰めることも一流の資質とも言えよう。

 昨年末の12月27日。東京場所前恒例の綱打ちを終え、両国国技館での力士会に白鵬(31=宮城野)は参加した。その後の取材対応で「体力の衰えを感じることはあるか」という質問に対して答えた、少々ウイットに富んだコメントに横綱としての余裕が感じられた。「そうね、お酒とか飲んだ時に感じたりすることはあるね。以前なら『よし次、行こうか』となるのが、今は『さあ、帰ろうか』ってなる」。

 アスリートにとって、年齢的な衰えを指摘されるのは、心地よいものではないだろう。そんな問いかけにも、間髪入れずに答えた懐の深さというか、心のゆとりを感じた次第。さらにこの1年を「ケガと闘った1年。病気もケガも、なるべく少なくしたい。ケガもしたけど、力の出し方というのはある」と振り返った。昨年は10年ぶりの全休という、憂き目にもあった。それでもこの横綱は、加齢という難敵と、きちんと向き合おうとしている。

 大相撲は昨年、5人の優勝力士を輩出した。37度の史上最多優勝を誇る白鵬は2度。「1強時代」から「戦国時代」へ様相を呈してきた、といわれる。一昨年は3度、3年前は5度の年間優勝だから、優勝回数という数字で見れば、確かに「1強」の牙城が揺らいでいるのは確かだ。

 アスリートなら必ず、戦いの場から姿を消す潮時が来る。東京五輪までの現役を見据える白鵬にも。その燃え尽きる前の、円熟味の増した姿を見てみたい。腰の据わったドッシリした土俵態度で、名実ともに大横綱として名前が刻まれるような。8日に初日を迎える大相撲初場所(両国国技館)を、そんな視線で見るつもりだ。【渡辺佳彦】